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現在及び将来のHCV肝炎治療

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  • 2013.7.22
出典名: N Engl J Med. 2013 May 16;368(20):1907-17. doi: 10.1056/NEJMra1213651.
タイトル:  現在及び将来のHCV肝炎治療
Current and future therapies for hepatitis C virus infection.
著者: Liang TJ, Ghany MG.
 
コメント
 
1989年にアメリカの研究グループにより非A型非B型肝炎としてC型肝炎ウイルスが同定されました。現在までに20数年経過していますが、有効なワクチンは作製されていません。しかしながら、近年の治療法はインターフェロン単独の治療法からプロテアーゼ阻害剤である抗HCV薬が登場し、インターフェロンとの併用療法によって、さらに有効性が高くなっています。次々と著しい進歩がみられる抗HCV薬、まだ臨床段階にあるものから市場に登場しつつあるものまで最近の抗HCV薬までを記述したNEJM誌のレビューを御紹介したいと思います。特徴としては、1)薬の有効性が高い。2)治療期間が短くて副作用が少ないものが登場している。3)インターフェロンを必要としない薬がある。4)既存の治療法で失敗したC型肝炎患者にたいしても有効性がある薬がある。などの特徴が挙げられます。本論文に記載されてあったHCVウイルスの遺伝子型による治療法、予測されるウイルス学的著効率および新薬の特性、特徴を記載したチャート形式の図表は以下にあります。
 
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以下は、本論文に記載されていた翻訳です。専門性が高く、長いので興味のあるかたはお読みしてください。
 
本レビューの序論 
 
肝炎ウイルス(HCV)の発見から20年が経過しました。アメリカのみならず世界各国で、相当な疾患の負担を伴う慢性疾患に罹患している大多数の患者にとって、治癒の可能性がでてきています。近年、ウイルス複製を特異的に阻害する直接作用する薬剤が登場し、初期のインターフェロン単独治療では10%未満だったのが70%までウイルス除去率を著しく向上しました。さらに、ウイルスを標的とする多くの他の薬剤や宿主細胞の因子が開発中です。いくつかは近いうちにおそらく認められるでしょう。問題は、誰を治療するべきか、何を持って治療するべきです。取り組むべき問題の複雑性が増し、注意深い考慮が求められています。治療が進歩するにつれ、システム全体の把握と治療を必要とする患者の医療がさらなる課題です。ほとんどの患者は、自分のことについて知りません。《米》疾病対策予防センターが近年、1945~1965年生まれのすべての人にHCVのスクリーニングを推奨しています。スクリーニングの過程で、多くの人がウイルス感染していることが予想されます。全患者を治療することが可能かどうかは明らかではありません。この記事では、HCV感染の現在の治療と薬剤の発展の展望をレビューしたいと思います。
 
HCV感染の遺伝子型1の治療
 
現在の標準治療
 
慢性C型肝炎の治療の目標は、合併症の進行を妨げるウイルスの除去です。24週の治療終了後に血清中のRNAの検出がみられないことを定義しています。エンドポイントは、長期のウイルス除去を示唆し、徴候の低下や、ネガテイブな臨床転帰の割合と関係しています。ウイルス株 遺伝子型1、2、3、4、5、6)のどのタイプであろうと、ペグ・インターフェロンとリバビリンは慢性C型肝炎患者の標準的な治療です。このレジメンでは、ウイルス学的著効 (SVR)は、C型肝炎ウイルス遺伝子型2もしくは3の場合、70~80%です。他のどのタイプの遺伝子型でも45%~70%です。ボセプラビルやテラプレビルの認可により、HCV遺伝子型1の3剤療法に繋がっています。プロテアーゼ阻害剤2剤のうちのいずれのどれかとペグ・インターフェロンやリバビリンの併用療法です。こうした2種類の3剤療法レジメンにより、いくつかの異なるレジメンが登場しています。同様に、たくさんの治療レジメンや同じような薬剤耐性変異があるので一つの薬剤では、他で代用することはできません。これらは、HCV遺伝子1型以外の他の遺伝子型をもつHCVを持つ患者に使用を認めてはいません。ペグ・インターフェロンαあるいはペグ・インターフェロンβが、このレジメンに加わる可能性があります。
 
3剤療法レジメンの課題
 
認可されている3剤療法レジメンは、プロテアーゼを含まないペグ・インターフェロン+リバビリンのレジメンより有効性が高いことが知られています。ペグ・インターフェロン+リバビリンのレジメンは、副次的な影響があり、たくさんの薬剤を服用しなければならないことや、8時間ことに薬剤を服用しなければならないため服薬遵守をしなければいけないことが極めて困難です。ボセプレビルでもっとも良くみられる副作用は、貧血、好中球減少、味覚障害(味覚の変化)があげられます。テラプレビルのもっとも多い副作用は、貧血、火照り、直腸肛門の違和感などです。貧血(ヘモグロビンレベルが10g/0.1dl未満)は36~50%の症例でみられ、管理すべきもっとも克服しなければいけない合併症です。エリスロサイト刺激因子は、貧血を管理するのにやや効果があるとして用いられてきました。しかし、この薬剤は深刻な副作用があり、高価であることが知られており、慢性C型肝炎患者の常用としてみとめられていません。研究では、リバビリンを減量し、2週間短く、1日あたり600㎎まで減量することで貧血を管理する有効な方法であることや、推奨する最初のアプローチであることが示されました。薬剤間の相互作用は、懸案事項となりました。
 
ボセプレビルは、アルケトース還元酵素や、Cyp3A4/5経路により、代謝されます。テラプレビルは、Cyp3A経路により代謝されます。二つの分子は、Cyp3A4やP-糖タンパク質の阻害剤です。Cyp3Aは、肝臓にたくさんあるタンパク質であり、多くの薬剤の酵素と関係あります。このような酵素の活性は、進行した肝臓疾患では低下しています。そのため、これらの薬剤を投与するとき、併用して投与する薬剤がボセプレビルやテラプレビルの濃度に及ぼす影響にのみならず、ボセプレビルやテラプレビルが他の薬剤に及ぼす影響を考慮しなければいけません。あるスタチン、抗うつ剤、抗けいれん剤、鎮痛薬、鎮静剤などの多くの薬剤が、禁忌など多くの薬剤が、ボセプレビルやテレプレビルと併用することを禁忌となっています。
 
ボセプレビルやテレプレビルをする全処方者は、薬剤を投与する前に薬剤間の相互作用を調べることを強く勧告されています。重要な情報は、インターネット上や薬剤に添付している処方情報、関連文献から入手可能です。
抗ウイルス耐性は、別の主要な懸案事項となっています。ボセプレビルやテレプレビルが単剤として服用される場合、薬剤投与後、早ければ4日後に耐性が生じます。
 
プロテアーゼ阻害剤に属する様々な薬剤は、薬剤耐性で同様なパターンを示しており、薬剤を服用して、耐性関連の変異が生じ、他の薬剤では効果がないであろうことを意味しています。認可されているレジメンのどれにも対応しない患者は、他の薬剤では治療をおこなってはいけません。いったん、薬剤を止めれば、薬剤関連変異は、時間とともに消滅し、野生型ウイルスのように複製が効率的にいかないため、おそらく消滅します。ある変異は、治療終了後、ウイルス集団の中で存在しつづけ、患者の体内に3年間以上、存在しつづけています。投薬レジメンの遵守や食事制限(薬剤吸収を最大にするため)、抗ウイルス耐性の出現を抑えるように強化しなければいけません。
 
 
肝硬変、HIV重複感染、肝臓移植をうけた患者は、ペグ・インターフェロンやリバビリンの薬が効く割合が低く、従来の治療が難しい集団の知られているレジメンの有効性のデータが不十分です。ボセプレビルやテレプレビルの3相の臨床治験では、肝硬変の患者は患者の約10%を占めており、肝硬変がない患者よりウイルス学的著効が低くなっています。
 
肝硬変の患者の数は少ないため、指針となったレジメンの応答の割合が低い傾向にあり、肝硬変の患者は、治療を48週間しなければいけません。予備治験では、HIV重複感染した患者の応答性は、HIVを感染していない患者と同様な結果となっています。認可されたレジメンでは、薬剤間の相互作用や深刻な副作用があるので肝移植をうけた患者では問題となっています。
 
3剤療法の適応
 
認可されている3剤療法の適応は、ペグ・インターフェロンやリバビリンと同様です。患者は貧血が報告されていますが、薬剤に対する禁忌性、深刻な合併症はありません。
肝繊維化の進行段階は急速に進むことが特に重要です。(バイオプシーによる4、5、6のIshakの繊維スコア)スコアの幅は0から6まであります。高いスコアほど肝繊維化が進行していることを示します。)NEJM誌の本稿の巻末で閲覧可能な巻末の補助情報を参照してください。こうした患者は、疾患の進行がはやい危険性が指摘されています。ウイルス学的著効の利点は、肝疾患が進行した患者では肝臓代償不全、徴候の改善、肝関連の危険性の低下が挙げられており、しっかりと確立しています。
 
ボセプレビルやテレプレビルが利用可能となることは、多くの理由の治療のリスクーベネフィットの割合を著しく変化するわけではありません。第一に、3剤療法の副作用はペグ・インターフェロンやリバビリンよりずっと悪くなっています。第2に治療から受けることで、べネフィットが得られる患者の応答率は、肝硬変の患者では、相対的に低いままです。
第3に抗レトロ剤耐性が、治療に応答しないほとんどの患者で発現しています。良いことは、インターフェロンがないレジメンが、近いうちに登場することです。
HCV遺伝子1型の患者は、現在どんな治療をするべきでしょうか ?肝硬変であっても未治療の患者や、初期治療をおこない治療中断後にウイルスが再発した患者、高い応答率がこの2集団に報告されており、治療のよい候補となっています。
 
しかし、中等度の疾患をもつ患者は従来の治療に適合しておらず、おそらく治療を見送り、より有効性があり、より安全なレジメンが利用できるまで保留中です。
 
肝硬変の患者や従来の治療で応答しない患者は、3剤療法の効果を得るでしょうが、応答率が最小です。全ての患者にたいして個々のアプローチが勧められており、治療のべネフィット、応答の見込み、治療の副作用の可能性などが議論されています。
 
直接は比較されていませんが、2つの認可された3剤療法は同様です。患者の適性や、プロテアーゼ阻害剤投与期間、副作用、分析および費用が、レジメンを選ぶ際に考慮されなければなりません。
 
インターフェロンなしのレジメン
 
多くの理由により、インターフェロンを含まないレジメンは、慢性C型肝炎治療にとって利点があります。リバビリン有り、なしで直接作用する抗レトロウイルス剤の様々な組み合わせに関して、大きな進歩がみられています。異なる作用のターゲットの薬剤の組み合わせで、抗ウイルス耐性を低下させる一方で、さらなる、相加および相乗作用的な効果となります。
 
課題は、高い可能性がある薬剤を正しく組み合わせることや、薬剤耐性の障害、副作用の分析をみつけることです。最終的なレジメンは、決まるでしょう。現在までに、プロテアーゼ、NS5A、ポリメラーゼ阻害剤、リバビリンあり、なしが評価されているところです。
 
概念実証研究(proof-concept- study)では、慢性C型肝炎患者では、従来の治療をうけている患者、うけていない患者、ポリメラーゼ阻害剤RG7128(ヌクレオチド阻害剤)、ダノプレビル投与後、13日後にペグ・インターフェロンやリバビリンの組み合わせでインターフェロンなし、リバビリンなしのレジメンで治療をうけている患者がいます。最大の濃度を服用した患者のかなり割合で、治療13日後にHCV RNAの検出が見られておらず、ウイルス除去がインターフェロンあるいはリバビリンの服用なしでウイルス除去が達成されたことを示しています。
 
直接作用する抗レトロウイルス剤は、治療をうけている患者のウイルスを除去する結果になっています。NS5A阻害剤であるダクラタスビルと併用してプロテアーゼ阻害剤、アスナプレビルの研究で、従来の治療では効果がみられていない遺伝子1a型、遺伝子1b型感染患者に投与24時間後には、11例中4例(36%)でウイルス除去がみられました。別の研究では、同じレジメンを用いて従来の治療で遺伝子1b型の患者で90%のウイルス学的著効がみられました。後者の研究では、直接作用する抗レトロウイルス治療剤からなるレジメンに応答するHCVのサブタイプの効果に注目しています。ホストを直接標的とする薬剤と直接、作用する薬剤を組み合わせることで、ウイルスに応答する違いの問題を回避する可能性があります。
 
最近の2つの研究によると、HCV遺伝子1型の患者を対象として経口投与の併用療法でウイルス学的著効は(80~90%)になっています。他の治療アプローチの議論に関しては、巻末の補足をご覧下さい。
 
HCVの緻密な医療
 
治療
バイオマーカー(生物指標化合物)やゲノミック医療では、C型肝炎患者の治療に対してのアプローチを個人に合わせる機会を提供しています。様々な臨床研究では、(例えば、遺伝子1型と遺伝子2、3型)は既に現在の治療に標準的な医療として、適応されています。さらに、治療期間中にウイルス応答を監視することで(反応―誘導の治療)
従来発見された層や他の因子により、ペグインッターフェロンやリバビリンの応答と関係しているものは、認可された直接作用する抗ウイルスレジメンの応答の重要な決定要因です。
 
こうした要因は若年層(45歳未満)、非黒人、低BMI、糖尿病既往歴がない、バイオプシーによる肝硬変、ウイルス量が低い(800,000未満 国際単位/1ml)およびHCVサブタイプ1b型です。
 
新しいバイオマーカーは、(例、血清中1P10)、遺伝テスト(例IL28B遺伝子の遺伝子多型)は、インターフェロンを基にした治療に関しては、予測精度が高いように見えます。イノシン3リン酸遺伝子の多型は、近年、リバビリンによる貧血の薬理ゲノム学で同定しました。しかし、防御を付与する遺伝子多型は、一般の人では、稀である。従って、こうした遺伝子多型のスクリーニングは、有効ではありません。治療レジメンの最近のコスト・べネフイット分析は、IL28B遺伝子タイプを基にして、選ばれており、IL28B遺伝子型をもつ患者は好ましく、サブグループでは、ウイルス学的著効が80%近くになり、ペグ・インターフェロン+リバビリンの治療を受けるでしょう。最初の治療が失敗した場合、認可されている直接的に作用する抗ウイルスレジメンは、次に提示されます。
 
IL-28B遺伝子型の検査が、標準的な治療として公式に認められておらず、患者や医療関係者が治療の応答への可能性を追加的な情報を求める場合、こうした検査は助けとなる可能性があります。しかし、強力な抗HCV薬やインターフェロンなしのレジメンが開発されているので、こうしたマーカーはすでに関係がないかもしれません。慢性HCV感染の自然歴の研究では、HCV感染した患者の多数は、肝疾患の遅発性の過程を経ており、命に繋がる重篤な合併症まで進行することはめったにありません。
 
肝炎に感染した患者を治療するさいにもうひとつ別の個人にあわせたアプローチは、重篤な疾患に進行しやすい患者のみに治療すべきです。しかし、臨床および遺伝学的なマーカーは、強い予測精度をもたない患者を同定しますから、さらに良い予測マーカーの発見が求められています。
 
結論 過去が将来の先駆者となるのならば、HCV感染治療は比類もないスピードで進むでしょう。薬剤の開発初期段階から販売開始まで多くのさらなる可能性のある薬剤が登場しています。インターフェロンなしのレジメンは、次の5年以内にHCV治療の中心となるでしょう。単純なレジメンが現実ものとなるのならば、トリアージを判断するしっかりとしたヘルス・ケア基盤が必要となります。自分たちの状態がどういう状態かを分かっていない何百万というHCV感染患者を治療できるようになります。
現在のアメリカのヘルス・ケア・システム基盤は、はなはだ不適切な状態です。アメリカでは、HCV感染率の死亡率は、HIVによる死亡率を上回っています。罹患率や死亡率を下げることに関して、否定できない長期間の便益があります。おそらく、最大の課題は、HCV感染を効果的に管理、治療するための医学的なツールが必要でしょう。さらに、経済的なリソースと社会的なコミットメントが、世界的な公衆衛生問題を取り除くために大きな議題に着手するのに相応しいでしょう。
 
 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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