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『「HIV-2を同時感染していると、HIV-1感染症の進行を抑制する」 NEJM誌2012年6月号からの記事紹介』

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  • 2013.3.27

 [ HIV-2 同時感染による HIV-1 感染症進行の抑制 ]

 「N Engl J Med. 2012 Jul 19;367(3):224-32. doi: 10.1056/NEJMoa1113244.」

『Inhibition of HIV-1 disease progression by contemporaneous HIV-2 infection.』
 
 著者:Esbjornsson J, Mansson F, Kvist A, Isberg PE, Nowroozalizadeh S,
     Biague AJ, da Silva ZJ, Jansson M, Fenyo EM, Norrgren H, Medstrand P.

*要旨翻訳は南江堂で翻訳された文章を引用しています。

 背景:ヒト免疫不全ウイルス 1 型(HIV-1)未治療感染者の大半が進行性の免疫機能

  不全と後天性免疫不全症候群(AIDS)を発症するが,HIV 2 型(HIV-2)感染者で発

  症するのは約 20~30%にすぎず、両型の重複感染者における感染症進行の自然歴は

  ほとんど明らかになっていない。

 方法:長期間(約 20 年)追跡を行うコホートに登録した後,HIV-1 に感染した被験者

  (HIV-1 単独感染または HIV-1・HIV-2 重複感染)223 例のデータを,最初に感染し

  たのが HIV-2 かどうか,AIDS 発症までの期間,CD4+T 細胞数および CD8+T 細胞

  数,ウイルス進化の評価に基づいて分析した。
 
 結果:AIDS 発症までの期間の中央値は,重複感染者では 104 ヵ月(95%信頼区間 [CI]

  75~133),HIV-1 単独感染者では 68 ヵ月(95% CI 60~76)であった(P=0.003)。

   重複感染者のほうが CD4+T 細胞数が高く,また CD8+T 細胞の増加速度が遅かっ

  た.これは感染症の進行が遅かったことを表している.HIV-2 感染が HIV-1 感染に

  先行した重複感染者は AIDS 発症までの期間がもっとも長く,CD4+T 細胞数がもっと

  も高かった.感染後のほぼ同時点での HIV-1 の遺伝的多様性は,重複感染者のほうが

   HIV-1 単独感染者よりも有意に低かった。

 結論:今回の結果から,HIV-1 感染症の進行は HIV-2 との同時感染によって抑制される

  こと,また重複感染は感染症の進行がより遅いことに関連することが示唆された.感染

  症進行の遅さは,HIV-2 感染が HIV-1 感染に先行した重複感染者でもっとも顕著であ

  った.これらの知見は,HIV-1 のワクチンおよび治療法の開発に影響を及ぼす可能性

  がある.(スウェーデン国際開発協力庁-スウェーデン発展途上国調査協力庁ほかから

  研究助成を受けた。

 コメント (本論文のintroductionやdiscussionの骨子と参考情報を加えています。)

    現在、世界中で6000万人ものHIV感染者がおり、HIVに対しては莫大な資金、人お

  よび研究が投下されていますが根本的な治癒策は未だにありません。HIV感染の過程は

  通常、3段階あります。1)ウイルスによる急性感染時期 2)CD4陽性T細胞の急激な

  減少 3)インフルエンザ様症状の進行、漸次的なCD4陽性T細胞の減少です。無症候

  性の時期では、持続的かつ漸次的なT細胞の減少が観察されます。最終的には、後天性

  免疫不全性症候群(AIDS)の段階では、免疫機能不全により日和見感染を発症します。

   前述した3段階の期間のうち、特に無症候性の時期は、感染者の間で大きな違いがあ

  ります。2つの主要なヒトレンチウイルスであるHIV-1とHIV-2は、主に西アフリカに

  限定されています。両者とも類似の感染ルート、類似の細胞を標的、エイズに限られて

  いるHIV関連症状を有します。

   しかし、HIV-1感染と比較すると、1)HIV-2は伝播する割合が低いこと、2)長期に

  わたって無症候状態であること、3)CD4細胞の減少が緩やかであること、4)死亡率

  が低いことが挙げられます。HIV-1感染していて未治療のほとんどの患者は、免疫機能

  不全が進行し、結果としてエイズを発症します。これと比較すると、HIV-2のみに感染

  した患者は20~30%であると報告されています。西アフリカでは、HIV-1とHIV-2をとも

  に感染している割合が0~3.2%であると報告されています。1995年、セネガルで性産業

  に従事している人ではHIV-1感染に対してHIV-2が防御的な効果を発揮していると報告さ

  れています。

  (Hamel DJ et al,  Twenty years of prospective molecular epidemiology in Senegal:

   changes in HIV diversity. AIDS Res Hum Reroviruses 2007; 23: 1189-1196)。

   この有効性は、他のコホートでは証明されていません。しかし、HIV-2感染がHIV-1感

  染やHIV-1複製を変化させることがin vitroで報告されています。このことは、HIV-2感

  染がHIV-1による日和見感染を抑える可能性があることを示唆しています。しかし、HIV-

  1とHIV-2を重複感染している患者の疾患の研究では、調査した患者数が少ないことと、

  経過観察の期間が短く、感染時期に関するデータが欠如しています。

   本研究で、筆者らはHIV-2が、HIV-1が惹起する疾病の進行に対して抑制的な効果を

  有することが示唆されました。この抑制は、エイズの発症時期、免疫系の細胞レベル、

  HIV-1進かの分子的なレベルに起因することが明らかになりました。我々の知見は、長

  期(20年)にわたってHIV感染しているコホート患者の経過観察に基づいており、これら

  はマスカク・モデルに関連する実験研究に裏づけされています。HIV-2重複感染により免

  疫抑制やサル免疫不全ウイルス感染により疾患に対して抑制していることが示されまし

  た。重複感染している患者は、HIV-1単独感染している患者よりCD4陽性T細胞が高く、漸

  次的に減少するCD4陽性細胞の割合も低いとしています。

  (E.M)

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