『大型HIV専門の病院におけるHIV-1感染同性間性交渉男性の不法ドラッグ使用率調査論文の紹介』
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- 2014.10.31
【 「日本におけるHIV-1感染同性間性交渉男性の間での不法ドラッグ
の使用率」を調査した論文の紹介 】
"HIV-1感染MSMの患者は、不法ドラッグ使用・経験者割合が多い
不法ドラッグ対策はHIV感染予防にでも重要"
以前に国立国際医療研究センター病院エイズ治療・研究開発センター(ACC)
で診療を受けているHIV-1感染MSMの方のHCV重複感染等に関して発表され
ている論文を翻訳し報告してきました。
今回は2013年度の末に発表されたHIV-1感染者(血液製剤によるHIV-1感染
した血友病患者を除く)について、HIV-1感染MSM患者の間では、不法薬物(ド
ラッグ)使用をする人・経験した人の割合が高く(40%)、また、危険性が高い
性交渉をおこなっていることを報告しています。
{ 本論文のイントロダクションに記載内容要約 }
2009年度の報告では、日本における一生涯での不法ドラッグ経験者を調べる
と一般人では2.9%と報告されています。HIV感染者のうち不法ドラッグ使用者
の割合に関しての研究は報告されていません。本論文では、HIV感染していて不
法ドラッグをする患者は、抗レトロウイルス療法、服薬遵守率は低いためHIVの
治療も不十分です。このため、一般的にHIV-1感染していて不法ドラッグ使用し
ている集団は、不法ドラッグを使用していない集団より予後が悪いと報告され
ています。効果的な介入方法を確立するために、不法ドラッグ使用とHIV染者の
特性と関連性を調べることが肝要でありHIV-1感染の拡大防止のため適切な治療
と介入が求められています。(E.M)
【 タイトル:「High prevalence of illicit drug use in men who have sex
with men with HIV-1 infection in Japan.」】
「日本におけるHIV-1感染同性間性交渉男性の間での不法ドラッグの使用率」
出典:PLoS One. 2013 Dec 10;8(12):e81960. doi: 10.1371/journal.pone.
0081960. eCollection 2013.
著者:1, Nishijima T1, Gatanaga H, Komatsu H, Takano M, Ogane M, Ikeda K,
Oka S.
目的:一般人での不法ドラッグ使用者の一生涯での使用率は2.9%である日本に
おけるHIV-1感染男性と性交渉をする男性間での不法ドラッグの使用率を調査す
ること
デザイン:日本でHIV感染者数の約15%を診察している東京にある大型のHIV専門
病院、単一施設でのクロスセクション研究
方法:不法ドラッグ使用率や不法ドラッグ使用患者の不法ドラッグ患者の特性と
社会的動態の関連調査をおこないました。2005年から2010年にHIV専門病院で
初診患者の登録をおこないました。相関変数は、構造化インタビューや医学レ
コードを用いて収集をおこないました。多変量ロジスティック解析は、不法
ドラッグ使用をするMSM対非MSMとの関連のオッズ関係を推定するのに調整をお
こないました。
結果:HIV専門病院(ACC)で1196例が登録され、大部分が日本人で、年齢は相
対的に若く。不法ドラッグ使用(注射ドラッグ使用)は、患者のうち35%である
と報告されています。不法ドラッグにより逮捕された人の割合は、4%はIDU(
不法ドラッグ注射経験あり)あり、5%はメタフェタミン、2%が不法ドラッグ
使用者でした。
MSMの集団は著しく不法ドラッグを使用しており、(調整値OR4.60;95%CI,
2.88-7.36; p<0.01が示されました。患者のサブグループ分析では、3つのグルー
プに層別化しました。(30,31から40,41)MSMは、オッズ比は=7.56;95% CI
(>40年:調整値OR=6.15; 95% CI, 2.40-15.8; p<0.01、調整値 OR=3.39; 95%
CI, 1.73-6.63; p<0.01)
結論:日本におけるHIV-1感染MSM患者での不法ドラッグ使用は高く、不法ドラッ
グ使用をおこなう集団に対して効率的な介入が求められています。
デイスカッション:
ACCは日本でのHIV-1感染者の15%をカバーしています。
HIV-1感染者のうちドラッグ使用者は35%、MSM HIV-1感染者のドラッグ使
用者では40%、30歳以下の若年層HIV-1感染MSMでは、特に高く52%でした。
2010年度での日本の不法ドラッグ者により警察に逮捕された人数は14,965人と
報告されています。その内訳は、メタフエミン12,200 人、大麻2,367人でした。
注射を用いて不法ドラッグを使用した人の数は、ヘロイン 11名、コカインは
112名であり、他はメタフェタミンでした。このことから本研究で不法ドラッグ
注射をした人はメタフエミンとみなしています。
厚生労働省エイズサーベイランス委員会によると血液製剤による感染したHIV
-1感染者数を除いて2011年度末までに19,976人のHIV-1感染者が報告されていま
す。その中で108名(0.5%)は不法ドラッグ使用の注射を介して感染しました。
ACCで調査した本論文の研究報告では不法ドラッグ使用者は、エイズサーベイラ
ンス委員会の報告よりずっと高く、1196名のうち53名(4%)でした。ヨーロッパや
北アメリカの多施設研究によると、不法ドラッグ使用者は、性交渉による伝播
より約5倍高いと報告されています。日本のHIV感染者は、近隣諸国、台湾や中国
と比較すると不法ドラッグ使用者数は、はるかに低いですが、HIV-1不法ドラッグ
使用者用の予防プログラムを開発する必要性が高く、一般的にHIV-1感染していて
不法ドラッグ使用している集団は、不法ドラッグを使用していない集団より予後
が悪く、HIV-1治療が不十分な傾向にあります。
HIV-1感染していて不法ドラッグ使用者は、不法ドラッグのみならず危険な性行
為をする傾向にあり、HIVや他の性感染症を伝播する危険性が高いと記載されてい
ます。
結論:ACCでは、HIV-1感染者のうち、30%が不法ドラッグを使用経験があり、MSM
患者では40%でした。エイズサーベイランス委員会の報告では、日本での不法ド
ラッグ経験者の割合は0.5%でしたが、本研究では5%でした。日本では、不法ド
ラッグを使用している人が少ないですが、その日本ですら医療や福祉の面で対処
するには、HIV感染不法ドラッグ使用者は困難であると記載されており、HIV感染
伝播の適切な治療と予防を確保し不法ドラッグの適切な予防と介入が求められて
います。