≪ 強力なインテグラーゼ阻害薬 1日一回、ブースト剤なし Dolutegravir(S/GSK1349572) の併用療法試験中の現データ報告から ≫
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- 2011.11. 2
≪ 強力なインテグラーゼ阻害薬 1日一回、ブースト剤なし Dolutegravir(S/GSK1349572)
(Shionogi-ViiV Healthcare LLCで開発中)の併用療法試験中「SPRING-1」の現データ報告を紹介 ≫
タイトル:[ HIV感染者抗レトロウイルス未治療患者におけるDoultegravir(S/GSK1349572)の
併用療法:SPRING-1 用量設定試験、無作為化試験、第IIb相試験48週中間結果 ]
( Once daily dolutegravir (S/GSK1349572) in combination therapy in
antiretroviral-naive adults with HIV: planned interim 48 week results
from SPRING-1, a dose-ranging, randomised, phase 2b trial. )
著者: van Lunzen J, Maggiolo F, Arribas JR, Rakhmanova A, Yeni P, Young B,
Rockstroh JK, Almond S, Song I, Brothers C, Min S.
出典: 『 Lancet Infect Dis. 2011 Oct 20. [Epub ahead of print] 』 より
要旨
背景: Dolutegravir(S/GSK1349572)は、1日1回、ブーストしない投与で抗レトロウイルス活性を
有する新しいHIV-1インテグラ―ゼ阻害剤である。SPRING-1は第III相評価に向けての用量を
選ぶよう設定された現在実施中の試験である。
計画かつ暫定的な現在のデータを提示する。
方法: 第IIb相試験、多施設共同試験、用量範囲試験において、治療未経験な患者に無作為に
dolutegravir 10mg、 25mg、 50mgあるいはエファビレンツ600mg投与(1:1:1:1)に割り付け
した。
用量は、薬剤割当以外は隠しておこなった。試験薬の無作為化は、コンピューターから
出された番号によって中央統合音声応答システムに従った。
試験薬はテノホビルとエムトリシタビンあるいはアバカビルとラミブジンを投与した。
試験は、2009年7月9日にドイツ、イタリア、ロシア、スペインおよびアメリカの34施設で
開始された。
選択対象者は、18歳以上HIV-1血清陽性で、血漿HIV RNAレベルが1000コピー以上かつCD4
細胞数、200細胞数/μl以上であった。
主要評価項目は16週でのウイルス量50コピー未満の被験者の割合で、48週までデータを
提示している。
分析は割り当て群に基づいて行われ、全被験者は試験薬をすくなくとも1回以上投与された。
この試験はClinical Trials.gov,No.NCT00951015に登録されている。
結果: 患者205例が無作為に割り当てられ、試験薬を少なくとも1回以上投与した。
53例、 51例、および51例 が dolutegravir 各々10mg 、25mgおよび 50mgを投与し、 50例は
エファビレンツを投与した。ウイルス量最大50コピー/ml、16週の応答割合は、dolutegravir
の全用量(各群で多少の差異)に対して93%(155例中144例)、エファビレンツは60%
(50例中30例)であった。48週応答割合は、dolutegravirの全用量(各群で多少の差異)に対
して87%(155例中139例)、エファビレンツは82%(50例中41例)であった。
核酸逆転写酵素阻害剤間部分群の応答割合は同様な結果であった。dolutegravir投与群で
3例、エファビレンツ投与群で1例のウイルス学的失敗を特定した。
インテグラ―ゼ阻害剤変異を特定しなかった。
用量に関連している臨床あるいは研究毒性効果は見られなかった。
中等度以上の薬剤関連有害事象はエファビレンツ投与群20%、doultegravir投与群8%で
あった。dolutegravirに関連ある重篤な有害事象はみとめられなかった。
考察: dolutegravirは、薬物動態ブースターを服用せず1日1回の投与した場合で効果的あり、
全検査用量で忍容性があった。
我々の知見は、第III相で1日1回dolutegravir 50 mgの評価を裏付けるものである。
※コメント:
抗HIVの薬は、大きく「逆転写酵素阻害薬」と「プロテアーゼ阻害薬」の2系統に分類されます。
前者は、さらに「ヌクレオシド系」と「非ヌクレオシド系」に分かれます。これら系統の異なる
3種類以上の薬を組み合わせる多剤併用療法が広くおこなわれています。
これに、新しい作用機序を持つこの薬の選択肢が加わっています。これはインテグラーゼ阻害薬
と呼ばれる新しいタイプの抗HIVウイルス薬です。作用の仕方が違うため、従来の抗ウイルス薬が
効かない場合や副作用で使えないときに有用です。
副作用が比較的少なく、他の抗HIVウイルス薬でしばしば問題となる脂質代謝異常を起こすこと
もないとされます。
おもにグルクロン酸抱合により代謝されます。
そのため、他の抗ウイルス薬に比べ相互作用を起こしにくく、飲み合わせの悪い薬がほとんどない
と言われており、切れ味鋭いウイルス抑制効果があります。
インテグラーゼ阻害剤として現在、『Isentress (Raltegravir; MK-0518)』があります。
通常、成人はラルテグラビル400mg 1日2回経口服用を基本としています。
今回、ご紹介するDolutegravirはインテグラーゼ阻害薬のタイプで 米国,欧州を中心に現在
PhaseⅢ試験実施中です。
塩野義製薬ホームページから
{Dolutegravir: 化合物プロファイル}
・ Shionogi-ViiV Healthcare LLC での開発
・ インテグレース阻害薬(経口)
・ Dolutegravirの特徴
◦ 臨床での強い活性(PhaseⅡb,10mg-50mg1日1回投与24週で≥90%の患者で血中ウイルス量
が<50コピー/mLを維持)
◦ PhaseⅡb試験の24週以上投与においてDTG耐性は分離されていない
(薬剤耐性株が生じにくい)
◦ RAL(商品名アイセントレンス:ラルテグラビル)治療失敗患者に有効性を示した
(低い交叉耐性)
◦ 良好な薬物動態プロファイル(PK/PDの関係が明確)
◦ ほとんどの抗HIV薬と用量調整なしで併用可能
今回の論文中では、肝臓の代謝酵素チトクロームP450(CYP3A)阻害効果を持つノービア
(リトナビル)のブーストをせず、1日1回の服用で効果がありました。
これから、実用化する段階では併用薬剤を1剤減らせことができ、かつ1日に1回の服用となる
ことから、うっかり薬を飲み忘れるなどといったことが減りアドヒアランス向上にも期待がもてます。
( E.M )