◇はばたき血友病情報(研究・開発) 「 HIV感染被害血友病患者の命を縮めるHCV重複感染 「Haemophilla」報告記事から 」
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- 2011.9.13
【 HIVとHCV重複感染の肝硬変等の研究報告から 】
タイトル:
[ HIVがC型肝炎血友病者に及ぼす影響 ]
( Impact of HIV on liver fibrosis in men with hepatitis C
infection and haemophilia. )
著者:Ragni MV, Moore CG, Soadwa K, Nalesnik MA, Zajko AB,
Cortese-Hassett A, Whiteside TL, Hart S, Zeevi A, Li J,
Shaikh OS
出典:「 Haemophilia. 2011 Jan;17(1):103-11. 」
要約: C型肝炎(HCV)は血友病患で主要な肝疾患の原因である。長期に
およぶHCVとHIVの重複感染後、この集団の肝線維症の割合に関す
るデータはほとんどない。
HIVがC型肝炎血友病者の線維症の有病性と危険性に及ぼす影響
を決定するためにクロスセクション多施設試験を施行した。
生検はIshak法, Metavir 法およびKnodell法により独立して
評価した。変数はロジステック回帰および受診者動作特性曲線
(ROC)曲線に関連して検査された。
HCV陽性男性生検者220例、23.6%がMeravir法でF3以上であり、
HIV/HCV重複感染のMetavir法による肝性繊維化スコアは、HCV単独
感染より高かった。1.6対1.3 (P=0.044)。変数は有意にAST、ALT、
APRIスコア(AST/ULN×100/血小板×109/L)α‐フェトプロテイン
(全P<0.0001), 血小板(P=0.0003)およびフェリチン(P=0.0008)を
伴っていた。
多ロジステック血清マーカー、α‐フェトプロテイン、APRIお
よびALTは有意にF3以上を伴っていた。[AUROC=0.77 (95%信頼区
間、0.69,0.86)]。α‐フェトプロテイン、APRIおよびフェリチン
はHIV陰性[AUROC=0.82 (95%信頼区間、0.72,0.92)]
HIV陽性[AUROC=0.77 (95%信頼区間、0.65,0.88)]では有意で
あった。
人口学的かつ臨床変数で変化したα‐フェトプロテイン(自然対
数)(P=0.0003)、年齢(P=0.006)、HCV 治療(P=0.027)は有意に線維
化を伴っていた。血友病男性のほぼ1/4がMeravir法でF3以上である。
肝線維症発症のオッズ比は、α‐フェトプロテイン上昇、加齢およ
び過去のHCV治療の患者で上昇している。
用語説明
クロスセクション分析:クロスセクション分析とは、特定の事象に対
する影響因子の相互関係を分析するというもの。
フェリチン:生体内の鉄貯蔵・鉄代謝の指標。また、組織内の鉄量と
は関係なく、各種の癌で高値になる。
α‐フェトプロテイン:臨床的に肝硬変に合併する肝細胞癌の早期診
断のスクリーニング肝細胞癌の経過観察、治療効果の判定、劇症肝炎の
肝再生の指標
ROC曲線下面積(AUROC)
F0線維化なし F1門脈線維生拡大 F2線維症架橋形成 F3小葉のひずみ
に伴う線維性架橋形成 F4肝硬変
コメント:HIV/HCV重複感染患者では、慢性肝疾患の進行がはやく肝不
全や最終的には死にいたることが一般によく認識されています。
HAART 治療によりHIVがコントロールされるようになった現在、
HCV関連肝疾患に対して如何に取り組むかが大きな問題となって
います。
HIVが、HCV慢性肝疾患の進行を加速させる正確なメカニズム
は未だに不明です。HIV 自体が肝炎を直接引き起こすとは考えら
れず,この作用はおそらくHCV に対する免疫応答の抑制を介して
いると考えられています。
血友病患者および非血友病患者を対象とした研究では,いず
れの患者群においてもHIV/HCV重複感染患者ではHCV単独感染患者
に比べて血中HCV 量が高い傾向にあることが示されています。
ですが、血中HCV 量がHCV 関連肝疾患の重症度と直接的に関
係することを示す決定的証拠は未だ得られていません。
(参考:hemophilia galaxy Baxter社、「学術情報」血友病におけ
るHIV とHCV の重複感染Haemophilia (2004), 10, 1?8
HIV and HCV coinfection in haemophilia)。
本研究では、血友病重複感染者で肝臓疾患の進行をHCV単独感
染者と比較しており、肝生検を用いた組織学的スコアリング化と
血清中の線維化マーカーなどを統計的に処理した結果、両群(HI
V/HCV重複感染患者とHCV単独感染患者)の間で有意性がみられた
(血清中の線維化マーカー中AST/ALTは除いて)と結論づけています。
現在、リバビリンとインターフェロンαを用いた併用療法が
HCV感染者に適応されています。しかしながら、HIV/HCV重複感染し
ている血友病患者の多くが、治療が困難なHCV遺伝子1a型に感染し
ており、治療を中断する例も少なくありません。
海外でHCV遺伝子1型に対して良好と報告されているプロテ―ア
ゼ阻害剤などを組み合わせることにより、奏効例増加の一助とな
ればと思います。 (E.M)