『順法精神軽視の社会、命に直結した製薬産業も不祥事続発。薬害エイズ事件被告企業の不正は最たるもの 国の監視体制、なぜ甘い』
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- 2016.5.26
「不祥事が相次ぐ日本及び外資系製薬企業 国・企業の順法精神・倫理観の大きなゆるみの表出か」
≪40年間不法製造 薬害エイズ事件被告企業の一つ、化血研・宮本理事長、4月23日 東京HIV訴訟
原告団・弁護団に正式に謝罪。25日には、大阪HIV訴訟原告団・弁護団に謝罪≫
近年、製薬業界の相次ぐ順法軽視の不祥事が続いている。
・日本の製薬企業の最大手 武田薬品 誇大広告で初の処分
武田薬品に業務改善命令、高血圧症治療剤で誇大広告。武田薬品工業 は6月12日、高血圧症治療剤
「ブロプレス」の臨床試験データに基づいた医療関係者向けの広告について、医薬品医療機器法の誇大
広告に当たるとして、厚生労働省から業務改善命令を受けたと発表した。(ロイター)2015年6月12日
関連して「財経新聞」より
車であれパソコンであれ、何か物を購入する時には、それを販売する側が提供する広告を参考にする人
も多いかと思う。そのため広告は、その物の性能や効果を適切に表したものでなければいけないし、
「適切に表したものだとう」という購入する側の信頼感により成り立っている。
しかし6月12日、大手製薬会社である武田薬品工業が販売する高血圧治療薬「ブロプレス」について、
会社が臨床研究で確認されている以上の効果があるように宣伝し「医薬品医療機器法」が禁じる誇大
広告に あたるとして、厚生労働省は同社に対して業務改善命令を出した。こうして誇大広告により行政
処分が行われたのは初めてのこと。
厚生労働省によれば、武田薬品工業は「ブロプレス」と他社の製品との病気発症率を比べたグラフを
広告に掲載していたものの、統計的な有意差がないにもかかわらず「ブロプレス」を長期間服用した方
が脳卒中の発症率が低下するとの表現を用いていた。
これに対して「医薬品医療機器法」が禁じる誇大広告にあたるとして、厚生労働省は同社に対して広告
の社内審査に外部の有識者を含めるなどの改善計画を、1ヶ月以内に提出するよう求めた。これを受
けて、武田薬品工業は、「処分を受けたことを真摯に反省し、心よりおわび申し上げます。さらに高い
信頼の獲得・維持に向けて全社一丸となって努力してまいります」とのコメントを発表をしている。
「ブロプレス」は1999年に発売された高血圧治療薬で、01年より京都大学などの研究チームで他社
の製品との効果を比較する臨床試験が行われ、06年10月に「脳卒中などの発症抑制効果に差はな
かった」という結果を示すグラフが学会で公表された。にもかかわらず、武田薬品工業は同月、医学誌
に掲載した広告で公表されたグラフの曲線とはずれたものを使用。そのグラフの曲線では、「ブロプレ
ス」を長期間服用すると、服用当初は脳卒中などを発症する確率は他社の製品より高いものの、その
後は他社を下回るようになっていた。
(記事提供元:「エコノミックニュース」 2015年6月16日)
・厚生労働省は2015年9月1日、製薬会社ファイザー(東京都渋谷区)ファイザーが抗癌剤など11製品で
報告義務の対象となる副作用212例を把握していたにもかかわらず、定められた期限内に報告してい
なかったとして、医薬品医療機器等法に基づき業務改善命令を出した。医薬情報担当者(MR)が作成
する医師との面談記録に、副作用に関する内容があったものの、安全管理総括部門に報告していなか
った。今月中に、是正措置と再発防止策等の改善計画を策定し、厚労省に提出することを求めている。
行政処分の対象となったのは、ファイザーが製造販売する11製品212例の副作用報告漏れ。同社の
自主点検で、営業記録について確認したところ、定められた期限内に医薬品医療機器総合機構(PM
DA)に報告していなかったことが判明した。
報告漏れとなった製品は、「スーテント」145例、「インライタ」26例、「トーリセル」23例と抗癌剤
が多く、過活動膀胱治療薬「トビエース」5例、リウマチ治療薬「リウマトレックス」4例、抗菌薬「ザイ
ボックス」3例などの事例もあった。未報告が判明したのは、2008年10月~15年3月までの製品で、
最長で6年5ヵ月の遅れがあった。
厚労省によると、医師との面談記録の中に、副作用に関する内容があったにもかかわらず、90人近
くのMRが安全管理総括部門に報告していなかった上、エリアごとの安全管理実施責任者も、それら
の内容を把握しておらず、副作用情報が適切に報告されているか確認していなかった。
そのため、業務改善命令として、同社に安全管理業務手順書の改訂を指示。安全管理実施責任者
の業務として、MRを含む管理下の全社員が安全管理総括部門に副作用報告を適切に実施してい
るか確認すると共に、その記録を保存するよう求めた。
また、米国本社の業務手順書の内容を具体的に書き下し、国内の安全管理業務手順書だけで業
務を実施できるよう見直すと共に、全社員に教育訓練を行い、適切な副作用報告業務を実施する
よう指示。
これら再発防止策に関する改善計画書を1ヵ月以内に提出するよう求めた。
( 2015年09月04日(金)「薬事日報」から)
・ノバルティスファーマに3度目の行政処分 約5500人分の副作用報告遅れ
製薬会社ノバルティスファーマ(東京)が国に報告義務のある副作用5475件を期限内に報告しな
かったとして、厚生労働省は13日、医薬品医療機器法(旧薬事法)に基づき業務改善命令を出し
た。副作用報告の遅れで同社に行政処分が出されるのは3回目。報告システムの障害が原因で、
悪質なケースは確認されていない。
同じ理由で治験薬でも154件の副作用報告の遅れがあり、厚労省は業務改善指示も合わせて
行った。同省によると、ノ社は統合失調症治療薬など計57品目の薬の副作用情報について、同
法で30日と定められている国への報告が最大約200日遅れた。このうち薬との因果関係が否定
できない死亡例が1例あった。
ノバルティスファーマは、白血病治療薬の副作用報告を怠り、2014年7月に業務改善命令を受け
たほか、今年2月には副作用情報を最大14年にわたって報告していなかったとして15日間の業務
停止命令を受けている。ノバルティスファーマは13日、「このような事態が起こることがないように、
全力で再発防止に取り組む」とのコメントを発表した。
(「産経ニュース」 2015.11.13 より)
さかのぼって大きく取り上げられた事件でノバルティスファーマは、2014年1月9日に厚生労働省
から薬事法(誇大広告の禁止)違反の疑いで東京地検に告発されている。
・製薬会社「日本ビーシージー製造株式会社」(東京・文京)が国への届け出とは異なる製法で結核
予防の 「BCGワクチン」を製造していたとして、厚生労働省は2016年4月26日、医薬品医療機器
法(旧薬事法)違反で同社に業務改善命令を出した。日本ビーシージー製造株式会社の販売会社、
日本化薬株式会社 広報IR部広報によると、「日本ビーシージー」は、自主点検とその後の査察の
結果により、承認書と製造実態の齟齬があった事が確認され、行政処分(業務改善命令)を受けと
発表した。内容は、「今回日本ビーシージーが受けた行政処分は、業許可における届出の不備、
承認書の記載上の不備、ならびにそれらを監視・監督すべき責任体制の欠如に起因するもので
あり、製品の品質および安全性などに関する指摘を受けた
ものではございませんので、流通、供給は従来通り行っております」とコメントしている。
しかし、順法精神の欠如に変わりなく、同社だけでなく製薬産業全体がの医薬品医療機器法の順守
を軽視しているのでは。人の命と直結する製薬産業の姿勢がぐらついている感がある。
・製薬業界の順法精神なんて何にも考えない最たる事件の勃発
2015年昨年の5月に発覚し6月に出荷停止命令を下された化学及び血清療法研究所(化血研・熊本
市)、薬害エイズ事件の被告企業として謝罪し和解確認書に署名したにもかかわらず、その時よりも
前から40年余という長い期間、血液製剤の不法な製造をし続け、発覚しないように偽装工作までし
続けた。
化血研が設置した第三者委員会からも手厳しい批判の報告書が出されたが、厚生労働省からも大臣
が異例なコメントを出し組織の継続の取り消しを示唆するところまで言及された。薬害エイズ事件被害
者で構成する薬害HIV訴訟原告団は、薬害HIV裁判被告企業の一つとして1996年和解確認書を交わ
した約束を踏みにじり、長きにわたって不正行為をしてきた問題に、真っ先に被害者に謝るべき問題と
して昨年12月2日に抗議書を化血研・宮本誠二理事長に手渡し直接原告団・弁護団に説明と謝罪を
することを求めた。
しかし、被害そのものへの認識が浅い化血研の姿勢そのものを表すように、なかなか直接の説明・謝
罪を避けていた。再三原告団からの強い要求から、4月23日正式に東京薬害HIV訴訟原告団・弁護団
に謝罪した。
「和解の精神を踏みにじる行為で、本当に申し訳ありませんでした。みなさまにお詫び申し上げます」
と化血研・宮本理事長は頭を下げた。「最高の薬を届けたいと思うがあまり、手続きを怠ってしまっ
た。独善的だったと思う」と弁解。
薬害エイズの被害を新たな体制、組織(製薬会社に渡すことの検討で)に引き継ぐことを条件にしてほ
しいとの要求に、宮本理事長は「新体制に薬害エイズの反省と教訓を引き継ぐ」と回答した。
被害者からは、「詫びをするなら歴代の理事長も出席して謝罪するのが謝罪だ 」 「(薬害のことを意
識していなかったと思われるが)この件でわたくしも衝撃を受けた」という宮本理事長の発言に対し、
「衝撃とは何の衝撃ですか。わたくしはエイズの告知で大きな衝撃を受けている」との問いに、同じ
ような回答の繰り返しで質問に沿った答えはなかった。総じて技術的な弁解が多く、患者や遺族への
思いはあまり伝わって来なかった。
化血研は、裁判当時から被害者への情さえない、患者一人一人の命を軽視し、ひたすら極めて冷酷
な科学万能の姿勢で30年以上も製造、販売に目を置いた製薬企業だと思われる。
専門家、特に医療に携わる専門家こそ、もっと人間性に富む教養を身に着け、せめて医療哲学も学ん
でほしいと感じた。病院などでは診療方針などに「全人的な見地から診療を行っている」との言葉が掲
げられているのが目につく。本当なのか?と思う問題にぶち当たることが多い。製薬会社も多くの
反省・教訓を生じた不祥事を起こしている。薬害根絶への教訓は自らの足元にあること、人の喜び、
涙、悲哀、怒りをしっかり見つめてほしい。