薬害HIV救済医療シンポジウム」が開催されました
HOME > はばたきインフォメーションスクエア > HIV・薬害エイズ情報 > 薬害エイズ
- 2018.5.24
[『薬害HIV救済医療シンポジウム』が5月18日、国立国際医療研究センター
で開催 主催:エイズ治療・研究開発センター(ACC)救済医療室 ]
ACC救済医療室は、昨年度から薬害HIV感染被害者救済に対する新たな取り組
み(薬害HIV感染被害者個別救済)の中心機関として、1997年設立当初から本来託
された役割をさらに深めた被害者個別救済業務に当たっています。
今回のシンポジウムは、こうした取り組みを広く知っていただくため、また「AC
C救済医療室」の役割なども周知するために開催されました。
昨年度来、ち密で濃厚な個別救済対応に尽くしてきた実例をもとに個別救済の在り
方と役割等の手順の流れを紹介し、また、ブロック拠点病院や拠点病院との連携や、
和解当時に原告団から託された生きた医療連携を実践した実例を、ACCやブロック
拠点病院からの紹介がありました。
実際に、被害者当事者支援団体(はばたき福祉事業団、MERS)との調整や共に
した行動で、被害患者さんのもとに出向いたり、かかりつけ病院との医療だけでなく
生活も視野に入れた治療・支援を数多く実践してきた成果を出してきています。
参加した医療関係者、自治体の方々、また被害患者や家族の方々(関東近県以外の
遠方から参加した患者さんや、ACC以外の通院患者さんも数多く見られました)
が、広い国立国際医療研究センター大講堂をぎっしりと埋め、3時間の講演に聞き入
っていました。
<プログラム>
開会挨拶:国立研究開発法人 国立国際医療研究センター 國土典宏 理事長
厚生労働省医薬・生活衛生局医薬品副作用被害対策室 岡部史哉 室長
〇「ACC救済医療室の活動」 ACC 潟永博之 研究開発室長/救済医療室長
〇「薬害HIV感染者の肝移植」長崎大学病院移植・消化器外科 江口 晋 教授
〇「肝細胞癌に対する重粒子線治療」群馬大学重粒子線医学研究センター
大野達也 教授
〇「HIV感染症と透析医療」 国立国際医療研究センター腎臓内科
日ノ下文彦 科長
〇「血友病性関節症のリハビリテーション」
国立国際医療研究センターリハビリテーション科 藤谷順子 科長
〇「ACC救済医療室と地域連携」ACC 田沼順子 外来医長/救済医療室副室長
大金美和 ACC患者支援調整職
〇「エイズブロック拠点病院とACC救済医療室の連携」
北海道大学病院HIV診療支援センター 遠藤知之 副センター長
独立行政法人国立病院機構仙台医療センター 伊藤俊広 HIV/AIDS包括センター室長
閉会挨拶:国立研究開発法人 国立国際医療研究センター 大西 真 院長
※ご存知のように、ACCは、薬害HIV裁判で、特に東京HIV訴訟原告団から、
「命の救済」を旗印に、訴訟の「全面解決要求書」において第一の恒久対策要望事項
として掲げられました。1996年3月29日に和解が成立し、第一の救済策として真っ先に
1997年4月に国立国際医療センター(当時)に特別な位置づけで設立されました。63人
のスタッフ、ACC専門外来、ACC病棟(20床)規模で、すぐ専門的かつ高度なAIDS
/HIV治療・研究・教育・情報発信ができる施設として業務開始しました。
2011年には、ACC内に被害者の長期療養にさらに力を入れるため「救済医療室(潟
永救済医療室長)」が設置され、院内外の組織と連携しながら被害者のより質の高い救
済医療を展開しています。
今回、実際に個別救済に取り組んでいる方々はすべて、「枠を越えて」と医療機関や
医療者の派閥、行政や福祉も含めて枠を越えて救済に関わる人たちが全力を尽くし続け
ることの大切さを強調されました。被害患者や家族、遠方の他府県からも参加し、AC
C通院患者以外の方々も多く見受けらました。実際にACCと協働して取り組んで個別
救済展開し、命と生活を守る努力を重ねてきて、救済の実感と感謝と感激が湧いてきま
した。厚生労働省の頑張りもすごいものです。特に医薬品副作用被害対策室や、医政局
の医療経営支援課、健康局のエイズ対策推進室は、少なくなってしまっている被害患者
の命と生活を守る約束に邁進して下さっています。多くの関係者の並々ならぬ働きが、
今回のシンポジウム開催につながったものと感謝しています。
ちなみに、今回のシンポジウムでも言葉として発せられた「枠」を超えて! この課題
は、1996年和解前後から、HIV医療体制構築の時に、血友病患者が病院に囲われて自
由に他の病院で感染告知や診療もできない状況を反省して、しがらみのない明け透けの
ブロック拠点病院選択に至ったことが何だったのかを思いだします。
私も30数年前、エイズ発生と血友病に降り注ぎ始めたころからの対応を振り返りまし
た。医療の壁に妨げられて被害者が命を奪われていった父権主義的な医療を排除し、反
省してつくられた、透明性の高いACCやブロック拠点と主治医の病院との双方向性を
を維持することで、質の高い医療が一人一人の被害者・HIV感染者に行き届くことを
目指して原告団と当時の厚生省との間で協議し、HIV医療体制を構築したあの頃の熱
気と比べると、最近のHIV医療体制の姿を見ていると時として煮えくり返る思いもす
ることがあります。
原点に立ち返り、被害者の命を守る国の約束を果たす役割を託された、関わる関係者
の人たちは、国からの特別な運営費等々が付与されている背景も考え、十二分に自覚し
てもらいたい。
今回のシンポジウム、原点に立ち返った救済医療と支えるHIV医療体制の新た
な出発にもつながった。
(大平勝美)
※当日お話された皆様をお写真でご紹介いたします。
△國土典宏理事長(左)、岡部史哉室長(中央)、潟永博之先生(右)
△江口晋先生(左)、大野達也先生(中央)、日ノ下文彦先生(右)
△藤谷順子先生(左)、田沼順子先生(中央)、大金美和様(右)
△遠藤知之先生(左)、伊藤俊広先生(中央)、大西真院長(右)