◇はばたき血友病情報(HIV/HCV重複感染) HIV感染被害者の肝移植 ピッツバーグ大学からの報告
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- 2012.7.19
『 HIV陽性血友病男性における肝移植転帰 』
( Liver transplant outcomes in HIV(+) haemophilic men. )
出典:Haemophilia. 2012 Jul 5. doi: 10.1111/j.1365-2516.2012.02905.x.
[Epub ahead of print]
著者:Ragni MV, Devera ME, Roland ME, Wong M, Stosor V, Sherman KE,
Hardy D, Blumberg E, Fung J, Barin B, Stablein D, Stock PG.
SourceDepartments of Medicine and Surgery, University of Pittsburgh,
Pittsburgh, PA,USA.
要旨
C型肝炎は、末期肝臓疾患の主な原因となっており、HIV/HCV重複感染者を
対象としては、主なものに移植(OLTX)適用がある。
HCV感染時期は、血友病患者と非血友病患者の間には差があり、そのことが
肝臓疾患転帰に影響を及ぼしている。
本研究の目的は、HIV研究における臓器移植に参加している肝細胞癌を発症
していない重複感染血友病と非血友病間のOLTX前後の死亡率を比較することで
ある。
臨床的な変数は、年代、性、人種、肝疾患病因、BMI、抗レトロウイルス治療、
MELDスコア、CD4陽性細胞数、HIV RNA PCRおよびHCV RNA PCRなどである。移植、
免疫拒絶および死亡が決定された。
HIV/HCV重複感染者104名が登録された。血友病患者15名中7名(46.7%)およ
び非血友病患者27名89名中27名(30.3%)が移植をうけた。血友病患者は、中
央値41歳と非血友病患者と比較すると47歳と若かった。P=0.01、また、非血友病
患者と比較するとOLTX前の死亡率が高かった。5(33.3%)、13(14.6%) P=0.03
MELD15にわずかに速く到達する。0.01年(血友病患者)、0.7年(非血友病患者)。
患者群は、ベースラインのBMI、CD4、HIVRNA、HCVRNA検出、OLTX後の死亡まで
の時間(P=0.64)。移植片喪失(P=0.80)、免疫拒絶による治療(P=0.77)。移植拒絶
率は、血友病と非血友病を比較すると、1年後では、14%(血友病)と比較する
と36%(非血友病)、 3年後では36%(血友病)と比較すると43%(非血友病)
であった。
OLTX後の生存率は1年後では71%と比較すると66%、3年後では38%(血友病)
と比較すると53%(非血友病)であった。
同様な移植転帰に関わらず、移植前では、重複感染非血友病患者より重複感染
血友病患者のほうが、はるかに死亡率が高い。
コメント
本論文は、臓器移植で有名なピッツバーグ大学での報告です。この論文によ
ると、肝臓移植を受ける前では、血友病HIV/HCV重複感染者は、非血友病HIV/HCV
重複感染者の方より死亡率が高いというデータがでています。
臓器移植を受けてからは、両者間の生存率に関しては、ほとんど違いはないと
本論文では述べています。
この違いは何かということは要旨では多くのことを述べていないので分かりま
せん。ここからは私見ですが感染時期やHCVのジェノタイプなどが関係している
のかもしれません。(E.M)
用語説明
・ MELDとは、MELD score(12歳以上の患者)
アメリカの移植ネットワーク(UNOS)において12歳以上の肝臓移植希望
患者の重症度の判定、優先順位の決定に用いられている。PT-INR, ビリルビ
ン、クレアチニンの値から計算される。
http://optn.transplant.hrsa.gov/resources/MeldPeldCalculator.asp?index=98
で簡単に計算する事ができる。15点以上は移植すべきと考えられている。
信州大学医学部・医学系研究科 外科学講座 より転載
http://www.shinshu-u.ac.jp/faculty/medicine/chair/i-surgery/shinryo/
isyoku/condition/index.html