≪FDA,新たなHCV治療のプロティアーゼ阻害薬2種類認可≫
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- 2011.8.18
≪ペグインターフェロンαとリバビリンでも治療困難なHCV感染者への治療が飛躍的に効果が期待されるHCVプロティアーゼ阻害剤、FDAが2種類認可。 その奏効とリスク情報≫
米食品医薬品局(FDA)は、5月にMerck社が開発したボセプレビルboceprevirと米VertexPharmaceuticals社が開発したテラプレビルtelaprevir、画期的なC型肝炎治療薬、プロテアーゼ阻害剤を認可しました。
現在、標準治療となっているペグインターフェロンαとリバビリンに加え、3剤併用療法が実施される予定です。今まで治癒率が50%を少し上回る程度であったのが、3剤併用療法により今後10-20%上積されると期待されています。
本論文では、Huh-7細胞株(肝癌細胞株、HCVを複製させることができる細胞株)を用いた様々な濃度添加による実験により、ペグインターフェロンαとプロテア―ゼ阻害剤およびリバビリンの組み合わせでおこ
なわれる3剤併用療法のなかで、単剤では効果がみられないリバビリンが3剤併用療法を効率よくHCVを抑制させる鍵を握っていると述べています。
従来用いられているペグインターフェロンとリバビリンとの併用療法は、貧血などの副作用も高齢者、特に女性に多いことがしられています。この3剤併用療法でも、副作用に関して貧血の程度が悪化するというマイナス面も明らかになっていることと1%以下の頻度ですが自殺傾向など精神症状も報告されています。
この他に血友病患者に懸念することは出血との関係です。この他に一番重要なことはHIV/HCV重複感染血友病患者は、すでにHAARTでプロテアーゼ阻害剤を服用していることです。今まで臨床治験で得られたデータに関しては非血友病者およびHCVのみ感染している患者を対照群としているため、血友病者および重複感染血友病者では、あらたなリスクが生じる可能性もあります。
プロテアーゼ阻害剤を用いた3剤療法を開始するにあたっては、患者や医療関係者と共に慎重に考慮しなければならない(有害事象や安全性に関するデータ収集する体制を整えること)を勧告しています。(E.M)
参照、NHF medical news およびMASAC勧告文
『 Medical News for June 2011 eNotes 』
[ FDA、2種類の新HCV治療薬を認可 ]
2011年5月、米食品医薬品局(FDA)はC型肝炎(HCV)を治療するために新治療薬を認可した。ニューヨークタイムズ紙によると、推計3200万人ものアメリカ人が慢性肝炎に罹患している。HCV未治療のままでいることは、癌、肝硬変、末期肝疾患および肝不全を発症する。
5月13日FDAはメルク社ボセプレビル、商品名ビクトレリスおよびバーテックス製薬会社、商品名インシビックを認可した。ビクトレリスおよびテラプレビルは10年来で 最初の新しいHCVプロテアーゼ阻害剤であり、ウイルス酵素の複製を抑える。
この新しい薬剤は週に1度のペグインターフェロンα(P-IFN)注射と毎日のリバビリ(RBV)経口服用を組み合わせる従来の標準治療をさらに強化する。患者のほぼ50%が従来の併用療法のみでは効果がない。
さらに、効果がない患者は、治療期間中‐24週かそれとも48週間消耗性の副作用を伴うことが多い。
インターフェロンαの副作用は重症インフルエンザ様症状、疲労および不眠である。リバビリンは貧血、発疹、疲労および催奇形性を引き起こす。
新治療は両剤ともHCV治療の奏効を引きあげるのを役に立ち、重症かつ致死的なHCVの影響の可能性から保護する。奏効は、治療終了後少なくとも6カ月間、持続陰性化(SVR)を達成することにより患者のウイルスを「除去」判断する。
技術的に完治することはないが、HCVを肝臓から完全に除去している。SVRは臨床医にとっていまだ目的である。血中での未検出までウイルス量を低下させることは、疾患の有害な徴候を減らす。
ビクトレリスの臨床治験では、P-IFN/RBVと併用して用い、P-IFN/RBVのみの20-40%と比較すると60%超のHCV感染患者がSVRを達成した。インシビックを服用した臨床治験では、P-IFN/RBVと併用し、SVR率は79%であった。
これはP-IFN/RBVのみを治療の比較するとき、45%も上昇していることを示している。
インシビックを服用する患者に関しては24週、ヴィクテリスを服用する患者に関しては28週と臨床治験で示されており、治療に要する期間がさらに短くなる期待は、副作用の可能性のリストから患者を外すことが少なくなる利点となるであろう。とりわけ、自腹で医療費を支払う患者にとって、コスト上昇は課題である。
新しい治療の一つ懸念すべきことは治療レジメンを遵守するため、毎日、たくさんの薬剤を服用することである。
ビクトレリスは1日に12錠、1日3回、4錠ずつ服用する。RBVは毎日、5錠あるいは6錠、1日2回服用している。新治療のもう一つ不利な点はコストであり、標準HCV治療はP-IFN/RBVを併用するならば、明らかに増大する。
実状は、2010年7月に発行されたニューヨークタイムズ紙の記事によると、P-IFN/RBV 1サイクルは30,000ドル超かかるであろう。ヴィクテリスを用いた完全治療は、26,400ドルから48,400ドル、インシビックでの治療は総計49,200ドルかかる。それゆえに、併用療法する患者は、HCV治療が2倍超かかることが分かるであろう。
メルク社およびベルッテクス社は収入要件を含むある適格条件にあう患者に無料の薬剤を提供する支援プログラムを提供することに注目しなければならない。また、両会社は保険会社に一部負担を支援する可能性もある。
「新しい治療が利用できることは、感応性が顕著に上昇するでしょう。一方で、全治療期間の短縮は、慢性肝炎感染との戦いにおいて大きな前進となります」。エドワード コックス医学博士、FDA医薬品評価センター、抗菌剤研究室主任は述べている。
このような薬剤の認可は、米血友病財団(NHF)と科学諮問委員会(MASAC)によるHCV治療に関しての勧告と時を同じくしている。MASACはこのような治療を選択する血友病患者や他の出血疾患の患者、とりわけ、すでに抗HIV治療をうけている患者に緊密なモニタリングをすることを勧告している。
また、医療関係者や患者に出血疾患、薬物間相互作用および薬剤抵抗性を含む可能な安全性考察を考慮することを勧めている。血友病および他の出血疾患の患者における慢性HCV感染の治療用のMASAC勧告文を参照し、ダウンロードしなさい。
タイトル:【インターフェロンαおよびプロテアーゼ阻害剤ボセプレビルあるいはテラプレビ ル 投与中、HCVレプリコンRNA低下に対してリバビリンが及ぼす影響】
[ Impact of ribavirin on HCV replicon RNA decline during treatment with interferon-α and the protease inhibitors boceprevir or telaprevir.]
著者名:.Hofmann WP, Chung TL, Osbahr C, Susser S, Karey U, Mihm U, Welsch C, Lotsch J,Sarrazin C, Zeuzem S, Herrmann E.
出典名:『 Antivir Ther. 2011;16(5):695-704. 』
要旨
背景:リバビリンはペグインターフェロンαおよび新規プロテアーゼ阻害剤を治療している慢性C型肝炎患者の初期かつ持続的陰性化を増強させる。
方法:このような次世代治療の抗ウイルス有効性をさらに明らかにするために、サブゲノムHCV RNA系を発現しているHuh-7細胞にリバビリン、インターフェロンおよびボセプレビルあるいはテラプレビルで様々な濃度および共添加下で培養した。抗ウイルス有効性パラメーターはHCV RNA低下で推測した。共添加による相乗効果はブリス独立モデルにより解析した。
結果:単剤抗ウイルス活性は濃度依存的にレプリコンを発現している細胞のHCV RNAを減弱させた。 (リバビリン、インターフェロンα、ボセプレビルおよびテラプレビル各添加48時間後、50%阻害濃度は381.16μM, 81.67IU,0.44μM,および0.81μMであった。)
リバビリン、ボセプレビルあるいはテラプレビル共添加後に関して、活性の偏向はみられなかった。一方で、リバビリンとインターフェロンαに対して、HCV RNAは相乗的に低下した。
(p<0.001) 3剤併用リバビリン、インターフェロンαおよびプロテアーゼ阻害剤は、HCV RNAをもっとも減弱させた。
結論 リバビリンとインターフェロンαおよび新規HCV阻害剤のインビトロでの抗ウイルス効果の有効性はリバビリンが次世代型治療で抗ウイルスの重要要素として必要である可能性を示唆している。
≪米血友病財団の医科及び科学諮問委員会勧告文#203≫
MASAC勧告#203
慢性HCV感染血友病患者および他の稀な出血疾患患者用のMASAC勧告文
MASAC#203(改定版#200,#193)
次項の勧告文は米血友病財団の医科及び科学諮問委員会(MASAC)により、2011年5月22日に認証された。
2011年5月22日NHFの評議員会で採用された。
血友病患者や他の出血疾患患者におけるC型肝炎ウイルス(HCV)感染は高い感染率かつ長期にわたっていることを踏まえて、抗ウイルス剤、プロテアーゼ阻害剤や他の直接作用する薬剤(DAA)を含むHCV治療用の新しい薬剤が利用可能になることは、本当に喜ばしい。
HCVのみかつ遺伝子1型に感染している非血友病患者の無作為試験に基づく勧告であるが、血友病者あるいはHIV治療として、すでにHIV治療として、プロテアーゼ阻害剤を服用しているHIV重複感染血友病者に関して、潜在的な安全性、出血および薬物間相互作用に対処するにはデ―タが不十分である。
1MASACは、新薬が開始されるので、とりわけHIV感染用の抗レトロウイルス治療の一環としてプロテアーゼ阻害剤を服用する可能性のあるHIV/ HCV重複感染血友病感染患者および他の出血疾患患者では、安全性監視が必要であると勧告する。
2 MASACは、FDAに新しいHCV薬剤の認可後の動向を、UDCやウエブ追跡データ収集を通じてHTCsと提携して展開、認可後の販促を通して製薬会社に有害効果の報告を支援、安全性データの収集を確信させるよう勧告する。
この文言は、一般情報のみに提供されるものである。NHFは医学的助言を付与せず、医療活動に従事しない。どんな状況下でも、NHFは特定患者の特定治療を勧めるものではない。治療コースを絞る前に全症例であなたの医者あるいは在住している地域の治療センターでの相談を勧めている。