◇はばたき血友病情報(研究・開発) 「最近、気になる血友病患者の脳内出血・頭蓋内出血(2)イタリア報告」
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- 2011.8. 8
タイトル:イタリア人血友病者の頭蓋内出血とインヒビター出現
「Intracranial haemorrhage in the Italian population of haemophilia patients with and
without inhibitors.」
著者:Zanon E, Iorio A, Rocino A, Artoni A, Santoro R, Tagliaferri A, Coppola A, Castaman G,
Mannucci PM; the Italian Association of Hemophilia Centers.
出典:『 Haemophilia. 2011 Jul 14. 1365-2516. [Epub ahead of print] 』
要旨 頭蓋内出血(ICH)は血友病患者では、もっとも重篤な出血であり、死亡率が高く機能不全となる。
イタリア血友病センター協会は (i)頻度、出血部位、死亡率および続発性疾患(ii) ICHの危険要因(iii)
ICHの急性期間中や再発予防に向けて用いられる治療を確立する目的で血友病患者のICHの発症の後方視的
研究(1987-2008)を実施した。
ICH発症総計112例のうち、88例(血友病A 78例、血友病B10例)で発症し、24例は再発した。
経過観察期間中、全コホートに関して集積的危険性は26.7/1000患者であった。ICHの年間割合は、
2.5/1000患者であった。(95%信頼区間、1.90-3.31) ICHの危険性は、幼児ではさらに高かった。(生誕後初年度
で24.4/1000患者、95%信頼区間、12.7-47.0、次年度で14.9/1000患者、95%信頼区間であった)。その後、
40歳以降漸次的に上昇した。
ICH発症に関して患者の特徴の効果を精査する単変量、二変量(年齢補正)および多変量解析は、血友病の
程度とインヒビター出現が強くICHと関係があることを示していた。
[重症と軽症の比較 HR3.96(2.39-6.57)、インヒビター出現有無の比較HR 1.83(1.25-2.69)] HCV感染もまた
ICH危険性と関連があった。[HR 1.83(1.26-2.69)]。
ICH再発を制御するために我々の経験に基づいた治療提案を提供する。
※血友病患者にとって、頭蓋内出血(ICH)は稀であるが最も重症の出血であり、生命の危険を脅かすような症例に
つながることもあります。
Witmer C, et al.Br J Haematol 152: 211-216, 2011.の発表論文の中でICH の最も強い危険因子は、インヒビ
ター保有、ICH の既往、重症血友病、頭部外傷であり、予防投与がHIV 陰性でインヒビターの出現していない重症
血友病におけるICH 発症を有意に抑制したと報告しています。
本論文でも幼児および40歳以降の血友病患者では漸次的にICHの危険性が増加したとあります。
統計学的な解析により血友病の程度(軽症より重症のほうがICH危険性の発症の頻度が高い。)とインヒビター
出現が強くICHと関係があることを示されています。
また、本論文では前述の論文報告にはないHCV感染もまたICH危険性と関連性がみられると報告しています。
要旨中には「ICH再発を制御するために我々の経験に基づいた治療提案を提供する」。と記載されていました。
全論文が手に入り次第、有益な提案事項があればまたお知らせしたいと思います。(E.M)