薬害HIV訴訟原告団は、被害の教訓を生かした、恒久対策の進展を毎年厚生労働大臣に要望し、その実現を図っています。

被害の根幹に、1980年代初め頃、治療として投与した米国由来の非加熱濃縮凝固因子製剤に混入したエイズ原因ウイルスによる、HIV感染被害が日本の血友病患者の約4割に生じた。2011年、被害者の半数近く、659人が亡くなっています。そして、毎年10年以上の死亡者が出ているのが現状です。

さて、血友病患者は、時代が進歩しても、生涯不足している凝固因子を補充し続けなければならない治療状況にあります。

そこで、患者の視点から、もっと患者・家族に負担無く治療から開放されていく治療法の開発を進めるべきと、1999年頃からHIV訴訟原告団は根治を目指してという遺伝子治療等の研究を国が率先して進めて欲しいと大臣要望を出しました。また、同時に、インヒビターに関する研究・治療も要望してきています。

2000年に、「血友病の治療とその合併症の克服に関する研究」（研究代表者：坂田洋一　自治医科大学教授）において、遺伝子治療に関する研究が始まりました。

それから、毎年、同上研究班（通称　坂田班）への研究継続の要望を続けてきました。
2010年要望書には、血友病治療環境の整備に、１）遺伝子治療を含む研究体制について「血友病の根治療法を確立させることによって、血友病患者は感染症や製剤による副作用などのリスクから解放される。従って血友病の根治療法を早期に確立するとともに、最近は実践を睨んでの研究に入ったため、患者の医療的負担軽減を目指した願いに届くよう血友病の根治療法に係る研究体制の大幅な拡充を図られたい。（医療統一要求書）」　　２）インヒビター発生の実態把握・治療緩急の整備について「血友病患者におけるインヒビター発生のメカニズムや疫学的実態についてはまだまだ未知の部分が大きい。国はインヒビター発生状況の実態調査を行うとともに、発生メカニズムの研究や患者・医療者が不安なく治療できるインヒビター治療体制を充実されたい。特に近年、免疫寛容療法を行なうことによって、インヒビターが減少或は消失する症例が増えてきている。しかし、費用的な制限などからこの治療を受けられる患者は少数である。副作用の解決の観点からインヒビター治療を積極的に行なえる環境を早急に整備されたい。
また、国産のインヒビター治療製剤の開発や生産への道を早く切り開き、高額な薬価攻勢にさらされている現状の早急なる解決を図られたい」

これに対する国の回答は、「血友病に関する研究については、平成12年度から「血友病の治療とその合併症の克服に関する研究」（研究代表者：坂田洋一　自治医科大学教授）において遺伝子治療に関する研究を実施しているところであり、引き続き血友病の治療法開発に向けた研究を推進してまいりたい」「インヒビターの発生状況については、平成13年度から厚生労働省の委託事業として実施している『血液凝固異常症全国調査』において引き続き実態を把握することとしている」「また、インヒビターの発生メカニズムや免疫寛容メカニズムについては『血友病とその治療に伴う合併症の克服に関する研究』班（研究代表者：坂田洋一　自治医科大学教授）において、血友病モデル動物を用いたインヒビター発症の基礎的解析、発症要因の検討についての研究を実施しており、新規薬剤開発にも有効な研究となっている。平成23年2月19日に開催された、平成22年度エイズ研究の中間事後評価委員会においても坂田班の研究課題は継続することを決定しており、血友病の根治療法が一日でも早く開発され、臨床応用されるよう、引き続き支援してまいりたい」「国産インヒビター治療製剤については、平成21年2月にMC７１０（乾燥濃縮人血液凝固第Ⅹ因子加活性化第Ⅶ因子）を新たに希少疾病用医薬品に指定して、早期開発に向けた支援を行っており、今後、承認申請がなされれば優先的に審査を行なうことになる」

遺伝子治療研究の進展について、研究班の班長としてリードしてこられた、自治医科大学の坂田洋一教授に概説をお願いしました。
遺伝子治療とは、研究の進み具合、将来展望が掲載されています。難しい点もありますが、チャレンジしてみて下さい。
 

【PDF】血友病遺伝子治療研究の現在