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◇はばたき血友病情報「ヘモフィリア・ワールド2012年4月号 VOL19 No.1」から (2) 7月で勇退する会長、副会長らのコメント

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  • 2012.4. 9

【ヘモフイリア・ワールド2012年4月号 VOL19 No.1】から  (2)
*本文を読みやすいように原文から離れない程度に意訳、内容選別および要約
しています。

原文は以下のホームページでご覧できます。
http://www.wfh.org/2/docs/Publications/Hemophilia_World/HW_April2012_EN.pdf

[多くのボランテイアの方々による尽力
                治験ボランテイアや治験分析を通じて研究は支援されています]
マーク・スキナーWFH会長

 私は、クリニックの一室で肝炎の治験に参加するために待っていながら、「ど
の治療も、そしてどの治癒も数多くのボランテイアから成り立っているのだ。」
と壁にかかっているメモに記しました。

 この50年の間、治療は大幅に進歩しました。
 私の知る限り、治療も新鮮全血液や新鮮凍結血漿、クリオプレシピテートおよび
血漿由来濃縮因子、そして、最近になり組み換え型凝固因子へと変化してきました。
 
 近い将来期待されている新治療は、一回注射するだけで長く効果がある遺伝子改
変型凝固因子製剤や遺伝子治療などです。

 今日、治療は一般なものから各個人に適合した対応が求められています。
 各個人の予防療法、インヒビター発現の危険性のある患者の特定、出血疾患をも
つ女性のための特有の指標などです。

 血液疾患患者や家族の今の希望は、治癒が可能になることですが、せめてすべて
の人のために簡単に入手可能である治療法が来る日です。
 その目標を達成するために、私たちは次の進歩のために、そしてすでに獲得した
ものを維持するために研究を支援し参加しなければなりません。

 私たちの課題は、当然、政府や納税者に対してもあります。
 エビデンスに基づいた治療、新しい治療を導入するさいのコストの正当化などで
す。

 血友病コミュニテイ、血友病センター、国内、地域、世界中に患者個人の転帰
データを作成することは重要です。
 このことは、治療の向上や希少資力の分配にもつながります。
 このことを可能にするためにもWFH(世界血友病連盟)は、各国の患者組織、医
療機関、治療センター、保健省と協力しあいながら、患者登録を進めてきました。

 すべての国、先進国のみならず発展途上国も医療にかける費用は限られています
から、優先度の高いものや効率的な価値を生むものを選択しなければなりません。

 医学的な転帰の成功例(入院日数、学校を休むこと、仕事を休む日を減らす。)
ことは、患者支援につながります。
 患者登録は、保健行政機関の無駄な治療や介入をなくすことの手助けとなります。
 患者データは、HIV、HCV、血友病関節症、インヒビター保因者、肝疾患で入院し
ている人や亡くなった人も含みます。
 このデータは重要で、血液疾患をもつ患者のために医療をするさいの問題に対処、
評価をするのに効果を発揮します。
 患者の治験への参加は、新しい治療や治療標準の最適化に対して重要です。
 何年にもわたって、WFHはこの役割を担い率先して患者に対して啓蒙活動を行って
きました。


[新しい血友病B遺伝子治療はこれから期待できる成果を示しています]
                                                         マーク・ブロッカー

 血友病B治療の遺伝子治療で大きなブレイクスルーを科学者たちは達成しました。
 ロンドンにある研究チーム、アミット・ナスウエイ博士およびエドワード・ツダ
ナーム博士らは、血友病Bの遺伝子治療で画期的な成果を発表しました。
 重症血友病患者6名が、正常血友病B遺伝子を組み込んでいるアデノ随伴ベクタ
ーを導入することで治療を受けました。

 遺伝子治療を受けた6人全員に遺伝子治療前に比べて血液中の凝固因子が高くなり、
凝固因子補充療法も回数が減り、治療の有効性が認められました。
 治験を受けた患者の1人は6カ月を超えて、8~12%の高い凝固因子レベルを維持し
ていました。

 これまでの血友病遺伝子治療の研究は、血友病マウスや血友病イヌを用いた研究
成果は知られており、血友病イヌでは8年超にわたって高いレベルを維持していたと
報告があります。

 本研究で用いたテクニックはシンプルなものです。ベクターという小さな運び屋
に、血友病B遺伝子を組み込んでおり、静脈注射を介してヒトの体内に入れます。
 このベクターはヒトや一部の霊長類に感染しますが有害なものではありません。
 血友病B遺伝子を組み込んだ改変されたAAV(アデノ随伴ベクター)は、患者の静
脈から肝臓へと運ばれます。
 その後、肝臓内で血液凝固因子Bを産生します。

 従来の研究では、凝固因子レベルは上昇しませんでした。このとき用いたベクター
はAAV2ですが、このベクターは非常に効率の悪いものでした。
 加えて、患者の体内の免疫系で攻撃されて効果が減弱しました。
 
 今回用いたベクターはAAV8で非常に効率性が高いものです。
 肝臓細胞に感染し、免疫系による攻撃を受けにくくなるようにしました。さらに、
今回は免疫応答を注意深くモニタリングしました。
 患者のうちの2名はウイルスに対する免疫応答がみられましたが、短期間のステロ
イド治療によりその作用を抑えることに成功しています。

 今回、治験に参加した6名の患者は現在もモニタリングを実施しています。
 さらに、アメリカや欧州で、安全性や有効性を確認するために大規模な臨床治験が
予定されています。
 もし、この治験が成功したならば、血友病患者に利用できるように認可されること
になります。

 血友病B遺伝子治療の成功は、血友病A遺伝子治療への大きなヒントを与えてくれる
でしょう。
 しかしながら、血友病Bの遺伝子治療で用いたベクターが、血友病B遺伝子よりさら
に大きな血友病A遺伝子でも使えるかどうかは分かりません。

 さらに、血友病Aに関しては、第VIII因子に対するインヒビターの発現などが課題
として挙げられます。

 今回、治験に参加していただいたボランテイアの方々は、血友病治癒に向かって大
きな貢献をしていただきました。

「WFHは遺伝子治療の携わっている医師や研究者を支援し、そして彼らの尽力に大い
に感謝の意を表したいと思います。」とWFH会長のマークW・スキナー会長は言って
います。


[評価の時代]
            アリソン・ストリート,WFH副会長MD

 私のWFHでの職務、副会長、メデイカルは任期が終わろうとしています。
 私は、血友病コミュニティの最近の大きな前進に敬意を表しています。これは、
本当に血友病研究や治療では、偉大なものです。

 2011年国際血栓止血学会で著名な血友病遺伝子治療の医師らが講演に招待されまし
た。
 講演演題はどれも臨床応用にとって重要なものです。私たちはこの講演に関与して
いる人々を称賛し感謝したいと思います。

 私たちの出血疾患コミュニティでは、多くの治療および遺伝子治療が、現在臨床治
験にあり、ここ数年以内に登録されるでしょう。
 血友病の臨床治験はヒトで実施されないと意味がありません。
 組織や動物での安全性や有効性は、必ずしもヒトにおいては当てはまるものではあ
りません。

 2012年7月にパリで開催されるWFH世界会議でも、臨床治験の実施に際してボラ
ンテイアの役割が討議されるでしょう。

 そして、これは評価の時代をつげることとなります。
 つまり、医師や出血疾患患者の満足の度合い、程度や医療の質の決定、患者や医師
による評価、資金面、治療に投資した価値の評価などです。

 このことを適正に実行するために、私たちはしっかりとしたデータ収集システムを
構築する必要があります。

 例えば、患者個人を多くの臨床診察によって評価、製剤使用に対する関節出血、
イメージング研究による関節機能や所見、学校や職場を休むこと、社会参加を含む
自己評価などによって、測定可能となります。

 集められた患者データは、クリニック間、血友病センター間、国内の地域間、各国
間で比較評価することを可能になります。
WFHで発表される年次の世界調査では、患者数や治療の利用など分析で全体像を描
き出すことを可能にします。

 血友病医療は、その独特の複雑性と治療費用の莫大さで、資金提供者により関心が
寄せられています。

 臨床面での有効性あるいはヘルス・テクノロジーの評価などは非常に重要です。
 これはデータが集めた人やレビューする人によって適正に評価されることが重要で
す。
 関連あるデータが集まるほど、評価の質は高まることになります。

 この観点からすると、集まるデータが多いほど、医療を改善し維持することになり
ます。

 本稿が私の副会長、メデイカルとしてのヘモフイリア・ワールドの最終稿となりま
す。
 私がWFHの評議として選ばれてからこの10年近く、世界の状況は大きく変貌しま
した。世界各国で、血液疾患患者の治療の認知と効果を提唱は日増しに強くなりつつ
あります。

 これらの目的を獲得し続けるために、世界的な資金システムの要望への高まりを
踏まえつつ、私たちは、世界各国の患者や医師らに重要なデータ収集や臨床転帰研
究を支援かつ伝えていきます。
 研究への支援は、私たち全員に利点があり、新しい風を吹き込むこととなります。

                                                                                                                               (E.M)
 

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