◇はばたき血友病情報(治療) 『血友病A及びBの出血頻度比較などから、概して重症A患者が病状重いとの報告から』
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- 2011.12.16
タイトル:【 血友病A及びB患者の出血頻度と凝固因子製剤使用の比較 】
( Comparing bleed frequency and factor concentrate use
between haemophilia A and B patients.)
著者:Nagel K, Walker I, Decker K, Chan AK, Pai MK.
出典:「Haemophilia. 2011 Nov;17(6):872-4. doi: 10.1111/j.
1365-2516.2011.02506.x. Epub 2011 Feb 22.」より
要旨
血友病A及びB患者の出血徴候は、因子欠乏が同程度のレベルのため全く
等しいと考えられている。
疾患重症度が同程度の血友病AとB患者の間の出血頻度および因子使用を
調査した。2001年1月から2003年12月までの3年にわたって、出血頻度と製剤
使用のデータを集めた。
情報は、血友病クリニックあるいは病院の緊急部門の患者、両親および治
療記録による家庭治療日誌から回収した。
データは重症血友病者(FVIII<0.01U/mL)58例、
中等度血友病者(FVIII<0.05m/L)10例、重症血友病者15例および
中等度血友病者5例が出血エピソード、手術後止血、1次および2次予防のため
治療を必要とした。
血友病A患者は血友病B患者より出血頻度(14.4、8.63出血回数/年)が多か
ったが、1年あたりでは、同等の因子補充を投与していた。
筋骨格合併症を治療するために、血友病A患者はB患者より外科的術式を
3.2倍多くうけていた。
ヒト組み換え型FVIII計21,363,409IUは血友病A患者(104722IU/患者/年)
およびヒト組み換え型IX計6,430,960IUは血友病B患者(107182IU/患者/年)が
使用された。凝固因子製剤使用の違いは、統計学的には有意ではない(P>0.05)。
血友病Bの出血頻度の低下は、血友病A予防投与の無作為化の結論が血友病
Bに正確に適用していない可能性を示している。
※コメントおよび本論文の補足
血友病A及びBは、血液凝固因子濃度が低いことにより関節や軟部組織の出
血をおこしやすく同じ臨床像や出血徴候を示しますが、血友病Bのほうが血友
病Aと比較すると出血の頻度や重症度が低いという傾向があります。
本研究で追跡した患者数は血友病A患者68名、血友病B患者20名と少ないで
すが、得られた所見は他のグループで発表されている結果と相関しています。
本論文において筋骨格問題を補正するために外科的術式をうける頻度が3.2倍
高いと報告しており、Tagarielloの報告で股関節置換や膝関節置換は血友病A
患者のほうが血友病B患者より3倍多いとすることや第VIII因子を欠乏している
患者は、出血頻度および重症度が強く、出血により引き起こされる筋骨格合併症
を補正するために多くの外科的術式を要するという他のグループの発表を裏付け
ています。
筆者らは、この頻度の差が年齢、HIVおよびHCV感染によるものに起因するもの
ではないとしています。他にもスウェ―デンの血友病患者100名の臨床的重症度
の合成スコアを検証した場合、重症血友病A患者のほうが重症血友病B患者より
重症血友病度スコアが高いことをSchulmanらの論文で報告しています。
本論文の結論としては、他グループの報告と同様に血友病A患者は血友病B患
者より出血しやすいことが改めて明らかになりました。
第VIII因子を欠乏している患者は出血回数が多く、出血により引き起こされる
筋骨格合併症を治療するために多くの外科的術式を必要としています。最近、
北米や欧州の国々の血友病治療センターで出血による長期間の筋骨格変形を防ぐ
ために、3歳前の血友病患者で早期予防投与が開始されています。
このため、重症および中等度の血友病B患者にも早期の予防的投与の必要性に
ついての議論が起こっています。
血友病Aと血友病Bとの出血症状の違いを考慮し、他の凝固因子の役割など血
友病Bの症状を明確にすることが今後の課題であると述べています。
( E.M )