◇はばたき血友病情報(治療) 糖ペグ化遺伝子組換え第Ⅸ因子製剤臨床試験と成人血友病患者の成人病ケア
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- 2011.12. 7
【血液凝固因子製剤情報 NO.62(平成23年9月)(財)血液製剤調査機構
血液凝固因子製剤委員会】より
1)情報 #1177
タイトル:[ 糖ペグ化遺伝子組換え第Ⅸ因子製剤の薬理動態(血友病B患者に
対する最初の臨床試験) ]
著者: Negrier C , et al.
出典:『 Blood 118: 2695-2701,2011. 』
要旨:血友病Bに対しては第Ⅸ因子(FⅨ)製剤による補充療法が推奨されている。
N9-GPは、糖ペグ化することで半減期を長くした遺伝子組換え第Ⅸ因子
製剤である。
治療歴のある血友病B 16例において、従来使用しているFⅨ1回投与し、
その後N9-GPが1回同用量(25、50 or 100U/㎏)で投与された。
その結果、インヒビター出現例は0例であった。1例ではN9-GP投与中
に過敏症状が出現したために薬理動態の解析から除外した。
血中半減期は93時間と従来の製剤の約5倍であった。N9-GPの生体内
回収率は従来の遺伝子組換え製剤や血漿由来製剤と比較して、それぞれ94%、
20%高かった。
以上、N9-GPは1回の輸中により出血エピソードに対して有効であり、
輸中投与回数を減らすものと考えられた。
※ 早くと患者のニーズが高かったペグ化凝固因子製剤。血中半減期が5倍と
言うと、漠然とした言い方だが、血友病Bでは4日以上効果が維持できる。
また、生体内回収率で血漿分画では20%劣るだけと言うと、血漿分画もかなり
いいレベルでもある。
2)情報 #1178
タイトル:[ 成人血友病患者に対する心疾患の危険因子 ]
著者: Lim MY , et al.
出典:『 Blood Coagul Fibrinolysis 22: 402-406,2011. 』
要旨:長寿化に伴って、血友病患者における心血管疾患(CVD)危険因子が増加する
ものと考えられている。しかし、エビデンスに基づいた治療ガイドラインはな
い。著者らは、血友病患者におけるCVD危険因子の頻度及び治療法について調査
した。
Mayo血友病センターに通院する成人血友病(35歳以上) 58症例(2006.1.1-
2009.10.15)が調査対象となった。
CVD危険因子を有する頻度は、高血圧症65.5%、糖尿病10.3%、喫煙12.5%、
肥満19.6%であった。31%の症例では脂質に関する血液検査が行われていな
かった危険因子に対する治療としては、降圧剤が84.2%、高脂血症治療薬が
12.1%で処方されていた。喫煙者7人のうち4人は禁煙カウンセリングを受けて
おり、肥満の11人のうち4人が生活改善指導を受けていた。
8症例(13.8%)がCVDを経験していた。(心筋梗塞<MI>3例、冠動脈疾患
2例、MIと脳梗塞の合併1例、脳出血2例)。この8例のうちアスピリン治療が行
われていたのは5例であったが、1例では内服後に血友病の診断がなされ中止さ
れた。1例ではステント治療後に2剤の抗血小板療法が行われていたが、鼻出血
がみられたためクロピドグレルが中止された。
このように、血友病患者では、年齢に一致した一般男性と同程度にCVD危険
因子を有していた。血友病患者においても、CVD危険因子のスクリーニング
を行い、食事療法や薬物治療を行うことは重要であり、開業医、循環器専門家、
血友病センター専門医の協力関係が必須と考えられた。
※血友病は先天性疾患なので小児の時から通院するため、小児科にかかり、
専門医は小児科医が多い。内科の引きつきも血液内科などで、高齢化対応は
出来ていない現状が多い。
最近は、中高年の血友病患者で、頭蓋内出血ではなく突発した脳内出血で
亡くなる人や重い後遺症に悩む人が少なくない。血圧が高かったりが見過ごさ
れていることや、動脈硬化など血管の破裂という取り返しのつかない出血が
起きていることから、成人病対策として循環器などかなり集中的にケアする
必要が出ている。
特にHIV感染被害を受けた血友病患者は、早期老齢化や血管内皮が弱る
ことで知られているため、さらに日頃の管理の中でよく見ていく必要がある。
ACCでは、被害救済のナショナルセンターとして、血友病の包括診療を
機能させるべき救済室を設置し、高齢化に備えた対応を始めた。