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◇はばたき血友病情報(治療) 「インヒビター保有血友病患者に対する乾燥人血液凝固因子抗体迂回活性複合体の予防的投与情報から」

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  • 2011.11.17

タイトル:[ インヒビター保有血友病患者に対する乾燥人血液凝固因子抗体迂回活性複合体の予防的投与 ] 南江堂 NEJM要旨日本語訳より転載。

 
        (Anti-Inhibitor Coagulant Complex Prophylaxis in Hemophilia with Inhibitors)
 
著者:ALeissinger C, Gringeri A, Antmen B, Berntorp E, Biasoli C, Carpenter S, Cortesi P, Jo H, Kavakli K, Lassila R, Morfini M, Négrier C, Rocino A, Schramm W, Serban M, Uscatescu MV, Windyga J, Zülfikar B, Mantovani L.
 
出典:『 N Engl J Med. 2011 Nov 3;365(18):1684-92. 』
 
背 景
 重症血友病 A で第 VIII 因子インヒビターを保有する患者は,重篤な出血性合併症が発生するリスク,末期関節症へ進行するリスクが高い.このような患者の出血を予防する有効な方法はまだ確立されていない. 
 
方 法
 血友病 A を有し,年齢 2 歳以上,インヒビター力価が高値で,出血に対しバイパス製剤として知られる濃縮製剤を使用している患者を,前向き無作為化クロスオーバー試験に登録し,乾燥人血液凝固因子抗体迂回活性複合体(AICC)の予防的静注を,目標用量 85 U/kg 体重(±15%)で週 3 日,投与間隔をあけて 6 ヵ月間行う治療と,6 ヵ月間のオンデマンド療法(出血に対し AICC を目標用量 85 U/kg [±15%] で投与)を比較した.2 つの治療期間のあいだには 3 ヵ月の休薬期間を設け,その間の出血に対してはオンデマンド療法を行った.主要転帰は,6 ヵ月の治療期間それぞれにおける出血回数とした. 
 
結 果
 34 例を無作為化した.26 例が両治療期間を終了し,per-protocol 解析で有効性を評価しえた.オンデマンド療法と比べて,予防投与は,すべての出血の 62%減少(P<0.001),関節血症の 61%減少(P<0.001),標的関節の出血(6 ヵ月の治療期間に単一の関節で 3 回以上の関節血症)の 72%減少(P<0.001)に関連した.無作為化した患者のうち,33 例が試験薬の投与を 1 回以上受け,安全性の評価が行われた.1 例が試験薬にアレルギー反応を示した. 
 
結 論
 第 VIII 因子インヒビターを保有する重症血友病 A 患者において,検討した用量での AICC 予防的投与により,関節内出血,その他の部位における出血の頻度が有意かつ安全に低下した.(Baxter BioScience 社から研究助成を受けた.Pro-FEIBA ClinicalTrials.gov 番号:NCT00221195) 
 
 
コメント
重症血友病A患者で第VIII投与後に第VIII因子を中和化する同種抗体(インヒビターが約30%発現します。とりわけ、高力価インヒビター発現している血友病患者の治療は複雑になります。このような患者を治療するには、内因系凝固血液経路が作用しにくいか、もしくは作用していないため、この経路を迂回(バイパス)して外因系凝固血液経路で止血を促す治療法があり、現在2種類のバイパス製剤が用いられています。具体的には、抗インヒビター凝固複合体(AICC)および組み換え型活性化因子VIIa (rFVIIa)があります。両方の製剤ともインヒビター保有患者の出血エピソードの約80%を制御しています。しかしながら、止血効率は通常の第VIII因子補充と比べると奏効率が低く、制御することができない出血のリスクがあります。また、不十分な止血制御は、慢性血友病性関節症を発症させるだけではなく、身体障害につながり生活の質を脅かします。
 
血友病患者にとって、出血を予防するのに定期補充療法は有効な標準的な治療です。インヒビター保有血友病患者では、第VIII因子の補充は非効率的のためAICC(抗インヒビター凝固複合体)の定期投与による予防の有効性が示唆されており報告がありましたが、この治療レジメンの有効性を証左はされていません。
 
本論文では、第VIII因子に対するインヒビターを保有する血友病A患者(年齢2歳以上、インヒビター力価が高い、出血に対してバイパス療法を利用している)を対象としてAICCの予防投与とオンデマンド投与【出血時の補充療法】での安全性と有効性を比較しています。
 
結果:予防投与療法では、オンデマンド療法と比較すると
全出血62%減少
関節血症61%減少
target jointの出血72%減少
 
:Target  Jointとは? 
CDC(米国)による定義: 
過去6ヶ月の間に4回以上出血した関節 
これまでの一生で20回以上出血した関節 
膝、肘、足関節が多い 
Target Jointへの出血が慢性血友病性関節症の主な原因と考えられている。
 
 
chart01.jpg
Target jointの出血症例
 
 
 
予防投与により減少

 

 

 

chart02.jpg

全ての出血症例

 


 

予防投与により減少

 

 

 

 

chart03.jpg

出血性関節症例

 

 

 

 

予防投与により減少

 

 

AICC予防投与(週3回[毎日連続して輸注しない]レジメン)患者の62%が、良好な反応を示した。オンデマンド療法との比較で有意に3倍超有効性がみられ、患者の38%が予防投与期間中に出血がみられなかった。
 
本論文における治療費用の比較
AICC予防投与 1ドル=77円計算 オンデマンド投与
493,633$(日本円換算、約3800万円)(出血が少なくなったことによる学校や仕事を休まなくなったことおよび入院を回避できたこと、関節疾患や関節変形など合併症を予防するベネフイットなどは考慮していない)。 205,549$(約1583万円) オンデマンド療法での1回の出血エピソードあたりにかかる費用15,961$(約123万円)

既存の第VIII因子補充療法が有効でないインヒビター保有の血友病A患者にとって、AICC予防投与することで顕著に出血回数が減少し、血友病性関節症などの合併症を回避することが可能であるなど大きな利点が挙げられます。しかしながら、この予防投与療法は費用が莫大にかかることや週3回の定期投与を必要とするなど患者の心理的および肉体的な負担などの課題が残っており、今後の問題の改善に期待したいところです。                                                                  (E.M)

 

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

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