◇はばたき血友病情報(研究・開発) 「血友病患者が直面しつつある心血管疾患の有病率と危険因子 USからの報告」
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- 2011.8.24
タイトル:
【 合衆国(US)における単一血友病治療センターの症例
血友病患者を対象とした心血管疾患(CVD)事象の有病率と危険因子 】
(Prevalence and risk factors of cardiovascular disease (CVD) events among patients with
haemophilia: experience of a single haemophilia treatment centre in the United States (US).)
著者:Sharathkumar AA, Soucie JM, Trawinski B, Greist A, Shapiro AD
出典:『 Haemophilia. 2011 Jul;17(4):597-604. 』
要旨:本試験の目的は血友病(PWH)患者を対象とした心血管疾患(CVD)の有病率と既知の危険因子
を調べることである。
本横断面試験は、5年にもわたり、合衆国における単一血友病センターで治療をうけている
35歳以上のPWHを対象とした。
医療記録は、CVDと肥満、高血圧、糖尿病、高コレステロールおよび喫煙などの危険因子に
関する情報を集め、大規模に精査した。有病率は米推定人口と比較した。
危険因子とCVD事象の関係はロジステイック回帰を用いて解析した。
試験コホートはPWH185例から成っている。一生涯のCVD事象の有病率は19.5%であった。
(36/185, 95%信頼区間[CI] 13.8-25.2%)。CVDの死亡率は5.4%であった。(10/185, 95%信頼
区間[CI] 2.7%-8.1%)。
合衆国非ヒスパニック系白人男性(US NHWH)と比較すると、PWHでは、血栓症、脳卒中および
心筋梗塞は約2倍であった。
PWHのCVD危険因子有病率は、このような危険因子が2つないしそれ以上ある39.5%の合衆国
非ヒスパニック系白人男性(US NHWH)血友病者(PWH)と同様である。
高血圧や喫煙はともに有意にCVD事象と関係がある。(オッズ比は各4.9, 6.3)
結論:本試験はCVD事象と危険因子がPWHでは少なくとも同等な有病率であり、合衆国では、
US NHWHよりはるかに高い。
それゆえに、PWHを対象としたCVDの予防を施行することは必要不可欠である。
※コメント
心血管疾患は我が国ではがんにつぐ死亡率であり食生活の欧米化、高齢化とともに増加してい
ます。
血友病患者も高齢化に伴い、一般成人と同様に糖尿病、循環器疾患などの成人病の問題が顕在
化しつつあります。
本論文では米国白人血友病患者が、心血管疾患の危険性が有意に健常人より高い可能性がある
と報告しています。
このため、血友病治療センターは心血管リスク予防手段として血友病患者の肥満、高血圧、
糖尿病、高コレステロールおよび喫煙などの危険因子を把握し経過観察することが必要であると
提言しています。
血友病患者の高齢化に伴い、心血管疾患は新たな課題として、注意する必要がありそうです。
(E.M)