◇はばたき血友病情報(医療情報)「抗IXa/X二重特異性抗体(ACE910):血友病Aモデルの出血と定期補充の止血の有効性を有する」
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- 2014.6.27
タイトル:抗IXa/X二重特異性抗体(ACE910):血友病Aモデルの出血と定期補充の止血の有効性を有する。
出典:J Thromb Haemost. 2014 Feb;12(2):206-13
著者:Muto A, Yoshihashi K, Takeda M, Kitazawa T, Soeda T, Igawa T, Sakamoto Y, Haraya K, Kawabe Y, Shima M, Yoshioka A, Hattori K.
要旨
背景
わたしたちは以前に抗IXa/X二重特異性抗体 hBS23が第VIII因子インヒビターの存在下でも後天性血友病Aの動物モデルの出血に対して止血予防活性を有することを報告している。hBS23を分子工学的操作したのち、臨床研究用に改良したヒト化バイオスぺシフイック抗体(二重特異性抗体)の同定をおこなった。
目的 出血に対して効果を調べることによって生体内でのACE910の止血の可能性を解明。予防使用の可能性の議論のための薬理学的動態パラメーターを決定。
方法
後天性血友病Aの霊長類モデル(カニクイザル)は抗霊長類第VIII因子中和抗体を注射することによって確立した。人為的に出血を誘導した手続きを処理したのち、ACE910あるいは組み換え型ブタ第VIII因子(rpoFVIII ) は静脈投与したのち、rpoFVIIIは、2日間、追加して投与をおこなった。出血徴候は3日間の追跡調査をおこない、薬理動態学的研究やACE910の多重濃度による投与をおこなった。
結果
*用語説明:ボーラス投与(量)◆一度に比較的多量に静脈に注射される薬物や試薬
1あるいは3mg/kgのACE910のボーラス投与により止血活性は、出血に対してrpoFVIIIの1日に2回投与、10U/kgと比較して示された。決定されたACE910の薬理動態パラメーターは、半減期(3週間)の延長と高い皮下生体利用効率(ほぼ100%)であった。薬理動態学パラメーターの基づいた刺激結果は、上記の止血レベルは1週間に1回のACE910の皮下投与により維持できる可能性があり、予防のよりよい有効性の可能性を示唆するものである。
結論
ACE910は、血友病A患者にとって別のオン・デマンド治療や使いやすいことや積極的な定期補充を提示する。
コメント:
以前に 2012.10.21◇はばたき血友病情報(研究開発) [血友病A治療に新たな治療製剤開発、バイスペシフィック抗体を用いて週1回・皮下注射 https://www.habatakifukushi.jp/old/square/hemophilia/hemophilia2/1-1.htmlに記載された医療ニュースの続報です。
参考資料:
まず、最初にnature medicine に発表された研究報告を中外製薬のホームページに記載されていたものをもとに本研究の成果を記載します。下記の分かりやすい図とともに開発された抗体が第VIII因子なしで止血できるのかなどメカニズムが分かると思います。
ACE910のメリットは、半減期が長いことから頻回に注射をする必要がないなどがあります。また、国産発の製剤が認可されればいままで外国産に多くを依存していて不安視されていた安定供給など大きく改善することが期待できそうです。
ACE910はウエブでの情報によると第I相の治験をおこなっており、2012年8月~2015年6月までと記載されています。治験の概要は日本人及び白人の健康成人男性と日本人の血友病A患者を対象に,ACE910を皮下投与した際の忍容性,安全性,薬物動態及び薬力学的反応について検討する。また,ACE910の薬物動態及び薬力学的反応の人種差を検討するため,日本人と白人の薬物動態及び薬力学的反応を比較すると書かれています。
本バイスペシフィック抗体が活性型第IX 因子および第X 因子と同時に結合することで第VIII 因子と同様の機能を発揮し3)、第VIII 因子がない状態さらには第VIII因子に対するインヒビターが存在する状態でも血液凝固反応を促進すること、非臨床の動物モデルで止血作用を示すこと、さらに高い持続性と皮下投与の可能性を有することを明らかにしました。これらの結果から、第VIII 因子の機能を代替する本バイスペシフィック抗体は、インヒビターの有無に関わらず週1 回の頻度の皮下投与で出血予防効果を示すことが期待され、血友病A 治療において新しい治療コンセプトを提供するものと考えられます。