◇はばたき血友病情報(医療情報) 高齢化する血友病感染被害患者の有病率からの長期療養管理の重要性示唆(「Hramophilia」2012.7.26 より)
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- 2012.9.10
『 高齢HIV感染血友病者の有病率および死亡率 』
( Morbidity and mortality in ageing HIV-infected
haemophilia patients )
出典:Haemophilia. 2012 Jul 26. doi: 10.1111/j.1365-2516.2012.02912.x.
[Epub ahead of print]
著者:van de Putte DE, Fischer K, Roosendaal G, Hoepelman AI,
Mauser-Bunschoten EP.
[ 要旨 ]
25年以上にわたって、HIV感染血友病者が経過観察を行っている。本研究の
目的は、HIV感染の有病率と死亡率を後ろ向きに評価することであった。
1980年以降、Van Creveldkliniekで治療をうけた全HIV感染血友病者60名の
医学記録から、治療や全合併症を集め、HIV非感染重症血友病者152名や年齢が
該当する一般男性と比較した。27名(45%)の患者がAIDSを発症し、31名(52%)
の患者が死亡した。
AIDSを原因とする一部もしくは単独の死亡は、71%にのぼった。AIDSやAIDS
関連による死亡は、HAART導入後で著しく低下した。我々の母集団の中で、心
血管発症が一番高かった。
2010年度、我々のクリニックでは、27名の患者が治療を継続しており、25名
(93%)がHAART治療を受けていた。高血圧や糖尿病が多くみられるが、健常人と
比較すると体重超過、肥満およびコレステロールは低かった。
自然頭骸内出血の発症は、非HIV感染重症血友病患者よりHAART服用のHIV感染
血友病者の方が高かった。(1000患者年あたり16.6人、1.2人)。HAART導入以来、
HIV感染が有病率や生存率に及ぼす影響は低下した。しかしながら、高血圧や
糖尿病の有病率の増加が、定期的な検査で診られている。
HAARTを服用しているHIV感染血友病者は、自然頭骸内出血の発症の危険性が
高いようにみえる。
*コメント(E.M)
血液製剤にHIVウイルスが混入したことで、血友病患者がHIVに感染被害を受
けたことからすでに約30年以上経過しています。HAART導入以来、HIVに対する
治療は劇的に変化し、患者の予後は確実によくなっています。しかしながら、
高齢化しつつある非HIV感染血友病患者にとっては、加齢に伴う諸症状など新
たな問題が生じるようになりました。
本論文では、Van Creveldkliniekで治療を受けているHAARTを服用している
HIV感染血友病患者を対象として、患者の加齢に伴う合併症を調べました。
すると、HIV非感染血友病者や同年代の健常人と比較すると、体重、肥満およ
びコレステロール値の割には高血圧や糖尿病の発症率が高いことがわかりまし
た。
他に問題なのは重症血友病者では、HAARTを服用している患者の方が、自然
頭骸内出血が多くみられたことです。これからのHIV感染血友病患者の治療に
とって大きな問題となりうる加齢による合併症を考慮することが必要不可欠
であると思われます。