◇はばたき血友病情報(治療) 「血友病患者に特有な関節内出血 出血させない・早期治療と関節保護について 『haemophilia 2011.9月号』から」
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- 2011.10.23
≪血友病患者にかかわる基本的知識;血友病患者に特有な関節内出血、
出血させない・早期治療と関節保護について『haemophilia 2011.9月号』から≫
タイトル:[ 血友病患者における関節保護 ]
( Joint protection in haemophilia. )
著者:Rodriguez-Merchan EC, Jimenez-Yuste V, Aznar JA, Hedner U,
Knobe K, Lee CA, Ljung R, Querol F, Santagostino E, Valentino LA,
Caffarini A.
出典:『 Haemophilia. 2011 Sep;17 Suppl 2:1-23. 1365-2516. 』
要旨
関節出血(関節内出血)は、血友病患者では特徴的に見られる頻度が高い所見
である。出血症状の診断と治療は出来る限り、すみやかにおこなわなければなら
ない。さらに、症状の消散がみられるまで治療は集中的に投与(発症時強化治療)
することが望ましい。
関節内の出血の存在は軟骨細胞アポトーシスや慢性滑膜炎を引き起こし、やがて
関節の変形(血友病性関節症)につながるので、「訳注付け加え」:(関節内の
血液)吸引は急性や大量出血のさいに重要な役割を果たしている。
超音波法(US)は、血友病患者では、急性出血の進行を評価する適切な診断技術
であるが、映像技術に関していえば磁気共鳴画像は最高水準にある。
患者の中には無症候性の出血症で、やがて主として足首にある程度の関節症にな
る。
今日、このような患者を防ぐ最も効果的な方法は、一次予防であり、実際に重症
血友病患者から中等度血友病患者へと変え、出血の発症を少なくとも最小限に抑え
る。一次予防が、何らかの理由で選択肢でないならば、二次予防や発症時強化治療
を考えなければならない。
インヒビター患者用には2種類の代替手段がある。(i) 非インヒビター患者向けの
同様な基本的な指針の後、発症時強化治療か二次予防かどちらかを適切なものとし
て、バイパス製剤を用いての出血コントロール(rFVIIaあるいは aPCCs)
(ii) インヒビター消失するための免疫寛容療法などが挙げられる。
※コメント
血友病に特徴的な出血は、関節内出血です。膝、足、肘の関節に多く発生します。
同じ関節内に出血を繰り返すことで、滑膜に炎症を起こし、関節構造が破壊されま
す。このため関節を動かすことが制限されて、「血友病性関節症」になります。
血友病性関節症の発生を防ぐためには,関節内血腫の再発に引き続き起こる「関節
内血腫→滑膜炎→関節内血腫」の悪循環を早期に断ち切るために2-18 歳の時期の定期
輸注で、欠乏凝固因子の濃度が正常値の1%未満に低下しないようにします。このこ
とにより、血友病性滑膜炎を予防することが可能です。具体的には血友病A 患者では
25-40 U/kg の週3回投与,血友病B患者では同量の週2回投与をおこないます。
( 参考文献:Nilsson IM, Bertorp E, Löfqvist T, Petersson H.Twenty-five years
experience of prophylactic treatment in severe hemophilia A and B.
J Intern Med 1992;232:25-32 )
血友病Aの第VIII因子インヒビター発症者の止血目的にはバイパス製剤{遺伝子組換え
活性型第VII因子製剤(rFVIIa)、活性型プロトロンビン複合体製剤(APCC)}が用い
られます。さらに、この第VIII因子インヒビターをなくす目的に免疫寛容療法が行われ
ます。この免疫寛容療法は、止血を目的としたわけでないのですが、免疫寛容療法中は
出血が少なくなるようです。(参考:金沢大学血液内科・呼吸器内科ホームページから)
( E.M )