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◇はばたき血友病情報(研究開発) 「血友病A治療で、第Ⅷ因子製剤とフォンヴィルブランド因子の相互作用についての報告から、新たな活用・期待」

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  • 2011.10.27

≪血友病A患者治療で、第Ⅷ因子製剤治療におけるファンヴィルブランド因子(VWF)を
                                        含有する製剤輸中の成果報告2件を紹介≫

[血友病A治療における、第Ⅷ因子とVWF(ファンヴィレブランド因子)の相互作用に注目。
                                                   
                                                   あらたな活用、有効製剤開発も…]

No.1
 タイトル: [ 血友病免疫寛容誘導導入療法における単一のフォンヴィルブランド因子
                            
                              を含有する血漿由来第VIII因子の利用―アメリカの事例 ]
      
           ( The Use of a Single Von Willebrand Factor-Containing,
              Plasma-Derived FVIII Product in Hemophilia a Immune Tolerance
              Induction - U.S. Experience. )

 著者:Kurth M, Puetz J, Kouides P, Sanders J, Sexauer C, Bernstein J, Gruppo R,
       Manco-Johnson M, Neufeld EJ, Rodriguez N, Wicklund B, Quon D, Aledort L.
 
出典:『 J Thromb Haemost. 2011 Aug 28. 1538-7836.2011. [Epub ahead of print] 』から

 要旨:
   (背景) インヒビターは重症血友病A患者にとって重篤な合併症である。免疫寛容導入

    療法(ITI)は、インヒビターを除去する主要な方法である。プライマリあるいは

    レスキューITIでは、濃縮製剤の種類の役割、とりわけVWF(フォンヴィルブランド

    因子)を含有する血漿由来第VIII因子濃縮製剤(VWF/pd-FVIII)の使用は明らかではない。
  
  (目的) プライマリあるいはレスキューITIにおける単一のVWF/pd-FVIII濃縮剤の利用の

    後方視的データ収集を記録する。
  
  (方法) プライマリあるいはレスキューITIにおいて、VWF/pd-FVIII濃縮製剤で治療を

    おこなったアメリカ11施設での血友病Aインヒビター患者の診療記録の後方視的評価

    をおこなう。
  
  (結果) プライマリITIは、インヒビター患者8例で75%が完全奏効あるいは部分奏効となった。
 
          セカンダリITIはインヒビター患者25例で施行され、52%が完全奏効あるいは部分

     奏効となった。
 
  (結語) この報告は、VWF/pd-FVIII濃縮製剤の単一使用による、主に乳幼児、高力価イン

     ヒビター患者の大規模集団を示している。後方視的データをITIへの反応が不十分で

     ある特徴的な患者を、プライマリあるいはレスキューITIのVWFを含む血漿由来

     第VIII因子濃縮製剤の投与に加える。


No.2
 タイトル:[ FVIII/VWF複合体の見解―2010年第29回WFHシンポジウムからの報告 ]
 
         ( Understanding FVIII/VWF complex - report from a symposium of XXIX WFH meeting 2010. )

 著者:Gringeri A, Ofosu FA, Grancha S, Oldenburg J, Ewing NP, Federici AB.
 
 出典:『 Haemophilia. 2011 Sep 22. [Epub ahead of print] 』

 要旨:
    フォンヴィルブランド因子(VWF)は、第VIII因子と複合体を形成する能力があり、第VIII因子

   の免疫原性を修飾する可能性がある。
   
    組み換え型第VIII因子(rFVIII)の重要な分画は、VWFと結合しないことが提示された。
 
    カナダのマックマスター大学で研究された実験モデルでは、VWF非結合型rFVIII分画は凝固活性

  を有さない。
 
    第VIII因子第1680番目のチロシン(Tyr)硫酸化はVWFとの相互作用に関して必須である。

    本研究は、スペインのグリフォルおよびCNS-CSICで実施された。Tyr1680硫酸化は、rFVIIIでは

  不完全であり、血漿由来のFVIII(pdFVIII)は完全であることを観察した。このことは、rFVIII分子

  がVWFに結合しない可能性を説明できる。ボン血友病センターの免疫寛容誘導(ITI)の治験で、

 第VIII因子インヒビター除去することが、安全な止血コントロールや予防治療の選択を可能にする

 ことを示している。
  
  様々な臨床治験で、VWFを含む第VIII因子濃縮製剤の臨床的役割を評価することが計画されている。

  RES.I.ST(レスキュー免疫寛容導入試験)は、FVIII/VWFが、危険性が高い血友病患者のITIを

 誘導するかどうか(RES.I.ST未経験)および、FVIIIのみでITIが以前、失敗した患者がFVIII/VWF

 (RES.I.ST経験)で治療できるかどうかを評価することを目的とした国際的な前方視的な試験

 である。
 
  記録は2009年11月に開始した。FAIReSt.Will(フォンヴィルブランド病におけるFanhdi および
 
 Alphanateイタリア後方視的な試験)では、Fanhdi(®) あるいは Alphanate(®)で治療をうけた

 フォンヴィルブランド(VWF)病患者120例が解析された。有効性は極めて良好で、副作用は報告され

 なかった。継続中のPRO.Wills試験は、重症遺伝性疾患VWF患者の二次的な長期におよぶ予防の

 有効性、安全性および医薬品の経済性を評価することを目的とした前方視的かつ多施設共同試験

 である。


 ※コメント 
  第VIII因子に対するインヒビター出現は血友病治療における最も重篤な合併症であり、重症

 血友病A患者の約25%に出現します。この阻害抗体が出現した場合には止血困難な出血や身体

 障害、早期死亡などに対するリスクが高くなります。

  免疫寛容誘導療法は、大量の第VIII因子製剤を頻回に投与することによりインヒビターの消失

 をはかる特異的かつ根治を目的とした治療法です。しかしながら、免疫寛容導入状態に導きやすい

 患者群がいるのに対して、免疫寛容導入時に20歳以上である患者群や罹患期間が5年以上である

 患者群では成功率が低いと報告があります。

  最近の研究でFVIIIとVWF(フォンヴィルブランド因子)の相互作用が一次止血およびその後の

 凝固カスケードの進行において重要な役割を果たしていることが明らかになってきています。

  FVIIIとVWF、両者の生物学と血友病とVWFの病態に影響するのみならず、血友病治療に重要な

 論文報告が相次いでいます。
  
  FVIIIとVWFとの複合体形成が、免疫応答を抑制するという報告では 1)特定のFVIIIインヒ

 ビターの結合を抑制 2)抗原提示細胞へのFVIII提示を抑制 3)マクロファージ等による

 マンノース受容体(CDC206)を介した貪食を抑制 などが示されています。
 
 参考:Haemophilia. 2010 Jan;16(1)Factor VIII and von Willebrand factor
 
    interaction: biological, clinical and therapeutic importance.
    Terraube V et al.

  他にもVWFを含有しないモノクローナル抗体精製FVIII製剤およびrFVIII製剤とFVIII/VWF

 複合体製剤を比較すると 1)インヒビター出現頻度が低い。 2)インヒビター患者において

 も高いFVIII回収率をもたらす。 3)高い免疫寛容療法成功率をもたらす。
 
 などの報告があります。参考:Haemophilia. 2007 Sep;13(5):663-9.Tarantino M et al

  最初に紹介した論文では、VWFを含有する血漿由来第VIII因子濃縮製剤(VWF/pd-FVIII)を用いて、

 初回の免疫寛容導入でインビターが高い率で消失しました。
  
  さらに過去に免疫寛容療法で効果のなかった患者群に対してもVWF/FVIII製剤が有効であること

 を示しました。

  次に紹介した論文は、FVIII単独によりITIが失敗した患者群にVWF/FVIII製剤による治療を

 おこなったところ、有効性がみとめられ副作用も報告されませんでした。

  近年、続々と分かりつつあるVWF/FVIIIの果たす生物学的意義を実際の臨床面の応用へと

 活かして、現在、問題となっている第VIII因子濃縮製剤投与によるインヒビター発現という

 危険性がなくなる一助になればと期待したいところです。
                                                                             ( E.M )

  

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