英国で、vCJDに汚染された可能性のある血液凝固製剤を使用した血友病患者の追跡調査から
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- 2012.3.16
タイトル:『汚染した可能性がある血液製剤を輸注したUK血液疾患患者を対象
とした変異型クロイツフェルト・ヤコブ病の危険性』
(The risk of variant Creutzfeldt-Jakob disease among UK patients
with bleeding disorders, known to have received potentially
contaminated plasma products.)
出 典:「Haemophilia. 2011 Nov;17(6):931-7. doi: 10.1111/j.1365-2516.
2011.02508.x. Epub 2011 Feb 23.」より
著 者: Zaman SM, Hill FG, Palmer B, Millar CM, Bone A, Molesworth AM,
Connor N, Lee CA, Dolan G, Wilde JT, Gill ON, Makris M.
要旨
汚染した可能性がある変異型クロイツフェルト・ヤコブ(vCJD)病の危険性は
定量化されていない。
UK血友病センター医師機構(UKHCDO)監視試験で20年間追跡したUK遺伝性血液
疾患患者787名を前向きに評価した。
後に臨床的にvCJDを発症した8名の供血者から製造、血漿を含むと関与して
いる1987~1999年の凝固因子の25のバッチのいずれかを使用して、遺伝性血液
疾患患者の治療をおこなった。
これらのバッジによる変異型感染は、血漿分画感染推定およびバッチ製造
データで推定した。生涯の間に治療した全投与の累積推計感染によって推定さ
れた。
897名の患者から、604名(77%)の患者は、関係のあるバッチに曝露した後
13年間にわたって追跡調査した。
患者604名のうち、推定vCJDの危険性があるとされる患者595名が1%以上、
患者164名が50%以上、患者51名が100%である。これは食事摂取によるUK集団
の危険性の素因も加えている。
604名の患者のうち、94名(16%)は供血の6カ月以内に臨床的にvCJDを発症
した供血者と関連ある感染推定バッチで投与を受けていた。
151名(25%)は10歳未満で投与を受けていた。2009年1月1日までに、どの患者も
臨床的にvCJDを発症しなかった。
現在まで、このコホートで臨床的にvCJDを発症していないことは、感染推定
血漿分画を過剰に予防しすぎたか関連ある細胞血液製剤提供者より潜伏期間が
長いかのどちらかを示唆している。
このコホートのさらなる経過観察が必要である。
コメントおよび付記
クロイツフェルト・ヤコブ病(CJD)は神経難病のひとつで、抑うつ、不安
などの精神症状で始まり、進行性痴呆、運動失調などの症状が現れ、発症から
1年~2年で全身衰弱・呼吸不全・肺炎などで死亡します。原因は、感染性を有
する異常プリオン蛋白と考えられ、他の病型を含めて「プリオン病」と総称され
ます。
日本では人口100万人に年間1人前後の率で発症するといわれています。
一方、変異型クロイツフェルト・ヤコブ病(vCJD)とは感染性プリオン病
のひとつで、牛の海綿状脳症(BSE)との関係が指摘されているものです。
1996年に英国で初めて患者が報告されてからヨーロッパ諸国を中心に患者が報告
されていますが、 2005年2月、国内で初めてのvCJD患者が確認されました。
(この患者の感染経路については、英国滞在時のBSE牛の経口摂取による可能
性が大きいということが、厚生科学審議会疾病対策部会クロイツフェルト・ヤコ
ブ病等委員会により報告されました。
変異型クロイツフェルト・ヤコブ病に関するQ&Aという形式で厚生労働省の
ホームページに詳しく記載されています。
http://www.mhlw.go.jp/qa/kenkou/vcjd/index.html
本論文では、vCJDの発生した英国での血液凝固製剤を投与した血友病患者を
20年間にわたって追跡調査したものです。その結果、vCJDの発症した供血者から
提供された血液を含むプールで作製された疑わしい血液凝固製剤を用いて、治療
をおこなった血友病患者は現在までにvCJDを発症していないと報告しています。
筆者らは感染推定した分画を十分に予防した結果なのか、それとも潜伏期間が
長すぎるのか現在までその答えはでていおらず、今後の経過観察が必要であると
述べています。