〚 血漿分画事業に係る統合(日赤と田辺三菱・ベネシス)新法人「日本血液製剤機構」、10月より事業開始 5月8日記者発表 〛
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- 2012.5.20
[ 日本の血漿分画事業、日赤とベネシスによる統合新法人
“日本血液製剤機構”の設立。本年10月より事業開始 ]
先般、5月8日に「日本赤十字社」と「田辺三菱株式会社」との合意に基づき、
田辺三菱株式会社の完全子会社「株式会社ベネシス」のそれぞれ血漿分画事業を
統合し、『日本血液製剤機構』を設立、本年10月1日より事業が開始される記者
発表がされた。
この点について、少し触れたい。薬害エイズ事件はエイズ原因ウイルスに汚染
された海外血液を原料とする血液凝固因子製剤を製造・供給し、また国はそのリ
スク回避を積極的に行わかなったことから、約5千人の日本の血友病患者らのう
ち約1400人が感染被害を受け、既に660人以上の命が奪われているものです。被
害者は未だ毎年10人以上の命を取られ、残る700人余の被害者も様々な重篤な合
併症を併発し命の瀬戸際にいます。
ところで、被害発生の原因となった以前の血液事業を根本的に見直し、献血に
基づく、日本の血液製剤の国内自給は、薬害エイズ事件の薬害再発防止の原点で
もありました。新たな血液事業の根拠となる血液新法は被害者の思いを実現すべ
く、国会の前回は全員をもって成立したものです。
国内自給において、血液の売買の禁止、日本が世界に誇る献血によりその目的
を達成するという、倫理感、人の思いやりが込められたものです。しかし、最近
は薬害エイズ事件発生の頃の医療環境に似た現象が出てきて、薬価差益優先で、
献血血液による国内製造の血漿分画製剤が輸入製剤に市場占有率を奪われていま
す。
そこには、国内製造メーカーの弱小化や、企業努力が欠けていたことも反省点
でもあります。また、国は血漿分画製剤を一般医薬品と同等の扱いで医療経済社
会の経営効率に傾斜した施策に放置し、法の精神を守る気概を忘れてきたことも
原因です。他方、被害の責任は問われませんでしたが、日本赤十字社は薬害エイ
ズ発生当初の70年代終わりから80年代初めまで献血血液を国内の血漿分画製剤製
造メーカーに託すこともなく、日本の血友病患者はエイズリスクのない国内献血
を利用できず被害を受けたのが実情でした。
事件発生から、それを取り繕うとして国会決議で第Ⅷ因子製剤「クロスエイト」
を国からの指示で生産し供給して今年25年が経過したわけです。その間に被害者
らが第Ⅸ因子製剤、インヒビター製剤、新たな効果的な製剤・より簡便性を持っ
た製剤の製造と供給を日赤に訴えてきましたが、それは生らず25年が過ぎました。
日本は日本赤十字社の一元的献血血液管理のもと、民間3社と日赤の計4社が狭
い市場の中で新たな展望が見えないまま競合していました。
献血血液を有効活用し、もっと、患者のニーズに合い、また医療現場に安全で
より歓迎される製剤を供給するためにと、国内の製造4社をまとめた、血液事業の
将来構想が練られ始めたと想定されます。
多分、その第一弾が、「日本赤十字社」と田辺三菱株式会社の子会社「株式会社
ベネシス」の統合新法人化による『日本血液製剤機構』の設立になったのでしょ
う。双方とも、過去の血液事業で薬害エイズ事件を発生させた原因をそれぞれ抱
え、一方は輸血用血液のみに献血血液を供給し事件当初身軽に献血血液で血友病
患者を救おうと積極的に動かなかった問題、また刑事責任も負った極めて厳しい
立場にあったことで、この反省と社会的責任の大きさを背負い新たな出発をした
ものと考えます。
この社会的責務の大きさを担うべく、新法人により、安全でより良い血漿分画
製剤、また日本発の製剤の研究と開発に期待したいと思うとともに、新法人の健全
経営のための透明性の確保や安全監視に対する評価機関を特別に設ける必要があ
るでしょう。さらに、より強固な日本の体制を図るためにも、残る2社も協力或
いは統合へのアプローチを取ってもらいたい。
( 大平勝美 )