HIV・薬害エイズ情報
変動する日本の製薬企業環境、『くすり』の基本的信頼性と保障が手が届かないところに行くのか
「抗HIV薬の販売流通の変動」
ギリアド・サイエンシズ株式会社は、日本での日本たばこ産業株式会社(JT)、鳥居薬品株式会社との抗HIV薬6品の日本国内における独占的販売権に関する契約を、2009年1月1日に終了する。そのため、日本での流通販売はギリアド・サイエンシズ日本支社が一手に実施することになる。製造販売(流通)が統括されることは情報管理など安全面でも安心感が出るとは思う。
一方、HIV感染者の抗HIV薬の特殊な事情も考慮して、これまで長く日本での販売・流通そして医療者や患者とも親しみを感じて暖かい対応を維持してきた日本企業が撤退することに寂しさも感じる。
このところ、日本の製薬企業環境も変化が激しく、患者側としてもその変化に戸惑うことも多い。効果的で安全な薬が日々進歩し、早期に供給されることに期待を抱く患者にとって、様々な製薬企業が参入することは歓迎するところだが、安定した「くすり」環境は長期療養にある患者にとっては大切とは思う。
もちろんコンプライアンスから、昔の血友病医療現場での医師や患者会リーダーと製薬企業との濃密な癒着的接し方を思い出すと、そうした関係は薬害・医療事故隠蔽などに結びつきやすく払拭されなければならない。
今後吸収合併など分裂融合を繰り返す「くすり」企業に対する、国民の命と健康・生活を守る国の薬事行政に、誤りのない創薬・製造等の安全監視・指導をより発揮されることを望む。
今回の当事者でもある鳥居薬品は、HIV腎症の併発症や抗HIV薬が引き起こす腎疾患から血液人工透析が必要となってくる患者の透析機関の受け入れなど、HIV/AIDSの偏見を抱かずスムーズに患者を受け入れる啓発活動を全国規模で広めていただいていることは、患者団体としても感謝申し上げたい。未だに維持透析機関を患者の身近な所に見つけられない差別的な対応が見受けられる。医療者のHIV/AIDSに対する偏見こそが、社会の差別意識の温床になっているので、引き続き啓発にたいする公益的な活動をお願いしたい。