はばたきとは
これまでの歩み
ご挨拶 -はばたきの成り立ちについて-
社会福祉法人はばたき福祉事業団理事(東京HIV訴訟弁護団) 安原幸彦
東京HIV訴訟弁護団の一員として、当初より関わってきた経過がありまして、社会福祉法人はばたき福祉事業団の生い立ちについてご紹介させていただきます。
薬害エイズの闘いの中で、今大平理事長がいわれたように、被害者自身によって救済事業をしよう、そしてその母体になる団体を作ろうという議論は1995年、裁判所の和解協議が本格化した頃から始まりました。
記録をひも解きますと、1995年11月22日に裁判所に提示した「恒久対策素案」の中に、「財団法人血友病薬害救済センターに関する要望」という書面が見られます。原告団がまとめた最初の構想であったと思います。裁判解決後も救済活動に長く取り組んでおられるサリドマイド被害者の「いしずえ」、森永ひ素ミルク被害者の「ひかり協会」の実践に学びながら、私たちは構想を固めてまいりました。
96年1月7日、この日の原告団総会を私は鮮明に覚えております。薬害エイズ解決の大きな転機となる2月の3日間の座り込み、これを決めた原告団総会です。この日に、「仮称財団法人血友病救済センターについて」という基本構想も採択しました。
そして解決後の5月19日、原告団総会で準備会の設置と1被害者100万円の拠出を決定いたしました。その後準備会では議論を重ね、96年秋からは認可に向けての厚生省との協議を開始しました。
ただこの段階では、法人としての活動実績を作ってから具体的な法人化をしようということになりまして、任意団体としてはばたき福祉事業団を発足させることになりました。
こうして97年3月23日の原告団総会で、任意団体としてのはばたき福祉事業団を立ち上げました。その後活動を積み重ねてまいったことは皆様もご承知のとおりであります。
法人化について議論を再開したのは2004年秋でした。2年ほど前のことです。
その理由は、この間の取り組みで確かに被害救済は進みました。
しかし、C型肝炎との重複感染の問題や遺族のPTSDを含めた被害救済など、まだまだ救済のための取り組みが必要だということも明らかになってきました。
薬害被害救済のためには、自分たちの救済活動だけではなく、広く多くの薬害、あるいは薬害根絶に向けた活動が必要である、そのためには今任意団体として活動しているはばたき福祉事業団を、もっと末永く存続できるよう法人化を図ろうではないかと考え方が固まっていったのです。
法人化のメリット、デメリット、それぞれに議論いたしました。法人化することによって組織を整備し、預金や不動産などの資産の名義もきちんと法的に明確にしよう、あるいは社会的信用度も増すようにしよう、職員のモチベーションを上げよう、税務上の寄附なども受けやすくもしよう、こんな議論もしました。
一方で法人化をすれば役員登記をする関係で、役員の氏名を公表することになる、また官公庁の審査も受けることになる、そういう点は問題ないだろうかということも議論しました。薬害エイズ訴訟は、訴訟としては戦後初めてだったと思いますけれども、匿名訴訟という形で、何よりもプライバシーを大事にしてきました。しかしこの間の闘いの中で、大平さんを初めとして、氏名を公表できる、顔も公表できるという環境を作ってきたという確信に至りました。
そういう中で法人化を進めることになり、諸官庁を始め関係各位のご協力も得まして、また様々な検討を経て、当初は財団法人というイメージでいましたけれども、今日の金利を含めたいろいろな情勢を考慮し、社会福祉法人を選択したわけであります。
7月27日の申請から8月28日の認可まで、もちろん準備にもいろいろありましたし、また申請後に様々な私どもの未熟さもあって、いろいろと不備もございましたけれども、関係各位のご協力を得て無事に発足することができました。
とは申しましても、まだ法人としてはひよこ、赤ちゃんの状態でございます。
私を含めて理事全員が今日もお披露目に先立って理事会を開き、今後の奮闘を誓い合いましたけれども、先ほど大平理事長も申し上げたとおり、皆さんのご支援なく今後の活動はできないと思っております。ぜひ今後とも社会福祉法人はばたき福祉事業団を温かい目で、ご指導ご鞭撻をいただきたく、そのことを申し上げてご報告とさせていただきます。どうもありがとうございました。
これまでのあゆみ
1997年4月1日 はばたき福祉事業団設立
はばたき福祉事業団は、薬害エイズ訴訟で和解が成立した後、被害者みずから救済事業を行なうために被害者を中心として設立されました。
「生きる」を旗印とした裁判闘争の末、ようやく和解は成立したものの、HIV医療体制の充実、遺族の心の被害の回復、薬害再発防止など、課題は多く残されていました。
原告団では和解成立以前から、被害患者や家族、遺族がこれから社会で生きていくためにはどのような恒久対策が必要か、真剣に検討を重ねてきました。
そして、被害者自らが立ち上がり、救済事業を行わなければ、真の恒久対策の実現はできないと考え、「仮称『財団法人血友病薬害救済センター』について」という基本構想(これがのちに「はばたき福祉事業団」となります)が採択されました。
そして和解成立後の原告団総会で、原告が和解金から一部を任意に拠出して、薬害エイズ被害者の救済事業や薬害再発防止を目的とした任意財団を設立することが決議されました。
この財団は、広く社会からの理解や支援を得られるように、将来的に法人格を取得することを前提としていました。
そして1997年4月、任意財団として、はばたき福祉事業団が設立されました。
それ以来、被害者のための救済活動を積み重ね、恒久対策は着実に進んでいきました。
はばたき福祉事業団では、その間もどのような形態の法人を目指すべきかについての議論を断続的に重ねていました。
2006年8月28日 社会福祉法人として認可されました
一方、相談事業や調査研究事業を行っていくなかで、C型肝炎との重複感染、遺族のPTSDなど、和解後に浮き彫りとなってきた新たな救済のための取組みも必要だということが明らかとなってきました。
こうした新たな課題、そして今後生じるかもしれない未知の課題にも対処すべく、被害者を永続的に支援し、安定した事業基盤を確立するためにも、法人格を取得する必要性が出てきたのです。
そうした中、被害者、弁護団、そして厚生労働省とも議論を重ね、はばたき福祉事業団の救済事業や将来構想にもっともふさわしいものとして、社会福祉法人を選択し、2006年8月に認可、設立されました。
2009年1月、研究機関として登録されました。
平成21年度から「薬害HIV 感染被害者・家族等の現状からみた、血友病に係わる今後の課題及び課題克服への支援研究」と「患者の視点に立った成育医療のニーズの調査と自立を目指した患者支援プログラムの開発」という2つの調査研究を実施しています。
患者が変われば医療も変わる
良質な医療・福祉のもと、病気・障害をもった人たちがのびのびと生活できる環境が重要です。わたしたちは、当事者の積極的な社会参加とそれを大きな包容力で受容する社会を目指して活動します。
これらの活動の成果は、広く社会に還元し、公共の福祉に尽くして参ります。また、これらの活動は、ボランティア・企業・非営利組織(NPO)・医療関係者・行政機関などと協働して推進していきます。
はばたきは今後もこれらの活動を恒久的に継続して行って参ります。